アニソンレーベルについて語りたい ~副題・楠木ともりの可能性~

さて、唐突ではありますが今回はアニソンレーベルについて軽く語っていきたいなと思います。

 

アニメにおいて、「音楽」というのは1つの大きなビジネスターゲットとなっています。実際、アニメの製作委員会に1番多く出資しているのはソニー・ミュージック(アニプレックスの母体)やエイベックスといったレコード会社*1であることが多いです。というか、現状では音楽を制作・販売する事業とアニメ製作とはセットで考えられているといっていいと思います。

 

レコード会社がなぜアニメに多く出資しているのか、もちろんBDやDVDの販売で収益を上げたり、そもそも製作委員会方式である以上出資を多くすれば関連ビジネスの収益も多く獲得することができるわけですが、やはりレコード会社としては「音楽」、つまり「アニソン」を売る、これには例えばライブを開催してそこで利益を得るといったようなものも含みますが、「音楽」のビジネスをアニメと紐づけて考えられていることが多いように感じます。

 

とにかく、レコード会社の目線に立てば「音楽」による収益を大きくするためにアニメを製作しているという側面があるということです。

 

ここで今回は1つテーマを決めて、そのテーマに沿ってアニソンレーベルについて語っていこうと思います。そのテーマとはズバリ「声優楠木ともりがアニソンアーティストとして覇権を取るには」です。楠木ともりさんはソニー・ミュージックアーティスツ所属の声優で、2017年よりアニメに出始めています。今年の冬にはメルヘン・メドヘンで、春にはGGOで主演を務めるなど業界的に期待されている新人声優という印象です。

 

そしていきなり結論から言わせてもらいますが、楠木ともりソニー系レーベルからアーティストデビューすべき」です。それこそが次世代の声優アーティストの覇権を掴むための最善手だと思います。そのことを説明すべく、まずは主要なアニソンレーベルの特徴について話していきたいと思います。

 

  • 各アニソンレーベルの特徴

 

近年の代表的なアニソン歌手として挙げられる名前の人はだいたいここにいるといっても過言ではないと思います。具体的にはLiSA、藍井エイルClariS、EGOISTあたりです。特徴としては、まあとにかくタイアップが強いです。10月から3期が4クールにわたって放送されるSAO、Fateシリーズのアニメ、物語シリーズ、来年にソシャゲのマギレコがアニメ化することが決まっているまどマギなど、この辺のアニメのアニソンを歌えればまあ人気がでるよねという感じのラインナップだと思います。

 

アニソンの老舗・キングレコード。特に声優アーティスト系に関してはここが総本山と化している印象です。代表的なのは水樹奈々田村ゆかり堀江由衣のいわゆる「御三家」ですね。田村ゆかりに関してはキングとは縁が切れていますが。若手でも水瀬いのり小倉唯上坂すみれ、最近では男性若手声優の内田雄馬もここからCDを出しています。ただ、「アニタイで売れる」というよりは「その人の名前で売れてる」感が強いです。

 

  • FlyingDog(ビクター系列)

アニソンに関していえばとりあえずマクロス」関連が強いレーベルという印象です。最近だと「マクロスΔ」の「ワルキューレ」からそれぞれ声優をソロデビューさせていますね*2。ここのレーベルでは、坂本真綾が声優アーティストとしては大きな成功を収めたと言えそうです。

 

キングレコードと並ぶ声優アーティスト系に強いレーベルという印象があります。代表格としては三森すずこ内田真礼あたりですね。

 

ここはなんといってもラブライブ!があるのが強すぎます。CDの売上もライブの動員力もアニソンの中では圧倒的です。さらに「アイドルマスターミリオンライブ」のCDレーベルもここです。まあ、「ラブライブ」も「アイマス(ミリマス)」もバンダイナムコが版権元なので、その系列のレコード会社がそれらの販売権を持っているというのは当然といえば当然なのですが。タイアップという面でもバンダイ系のアニメなので結構美味しいものが多いです。それでも、正直ソニー系と比べると見劣りするかな‥とは思います。

 

レコード会社の規模としてはソニー・ミュージックグループに匹敵するほどであり、有名なアーティストも数多く所属しているのがこのエイベックスです。しかし、アニソンという括りで見た場合は、それほど強いレコード会社とは言えないと思います。i☆RisやWUG*3など、声優アイドル路線で勝負を仕掛けていますが、ラブライブアイマス、あるいはソニー系の声優ユニットTrySailあたりに遅れを取っている印象です。

 

無印アイマス、デレマスのCDレーベルとして存在感を放っています。あとは、アニソン界の王様とも言われる水木一郎がここからCDを出しています。ただ、特筆すべきはそのくらいで、あまり所属アーティストが目立っているとは言い難いです。

 

fripSideが有名なところです。他にも禁書3期のOP担当である黒崎真音やなぎなぎなども代表格として挙げられそうです。fripSideはなんといっても「超電磁砲」の主題歌が大きかったと言えますね。強いタイアップがつけばアーティストとして一気にのし上がれるという好例です。ついでに「ごちうさ」関連もここが版権を持っています*4

 

とりあえず、主要なアニソンレーベルはこんなところでしょうか。

 

楠木ともりがアーティストデビューするならベストな選択はソニー

そもそもなぜ「楠木ともり」にこだわるのか。まずはそこから話していきましょう。

 

長年、声優アーティストとしてアニソン界を牽引してきたのがキングレコード水樹奈々でした。もう平成も終わりますが、昭和のアニソン女王が堀江美都子なら平成のアニソン女王は水樹奈々でしょう。「声優」である水樹奈々が「アニソン歌手」としてもトップを走り続けたというのはすごいことだと思います。普通では決して成し得ない偉業だったんだと思います。それでも、オタクであり「声優」が好きな自分としては「声優アーティスト」がアニソン界でトップを走る姿というのをまた見てみたいと思ってしまうわけです。

 

声優でありながら歌手としても幅広く支持される、そういう存在は声優好きと世間とを結びつけてくれるすごいパワーを持っています。オタクの前だけでなく、例えば紅白歌合戦に出て年末のお茶の間の前で歌を披露する、そういう声優は希望です。オタク趣味の人間にとって「紅白で家族と一緒に声優を見れる」というのはどれほどエモいことなのだろうか‥なんだか自分が市民権を得たような気持ちになれるわけです。

 

とにかく、声優アーティストとして次代を担える存在は誰だと、そう思っていたところに出てきたのが楠木ともりだったわけです。

 

その楠木ともりに関して、なぜソニーレーベルからのソロデビューが良いと考えているかの理由ですが、1つは楠木ともりは所属事務所もソニー系列(ソニー・ミュージックアーティスツ)であるということです。音楽活動をしている声優というのはたくさんいますが、多くの場合所属事務所(例:アイムエンタープライズ大沢事務所81プロデュースなど)と音楽活動をマネジメントするレコード会社(例:キングレコードポニーキャニオンランティスなど)は別です。もちろん、これらを同一あるいは同系列の会社で担わせている声優もいます。例えば、ソニー系列でミュージックレイン所属の声優がそうですね。TrySailに関しては所属事務所もレコード会社もすべてソニー系列の会社です。しかし、こうした場合同社内の声優同士でユニット活動を行うことが前提となっているケースも多く(TrySailがまさにそうです)、ソロで音楽活動を行う声優のほとんどは所属事務所とレコード会社は別という人だと思います*5

 

楠木ともりの場合、特に「セット売り」のようなことをされている雰囲気もなく、同時期にSMA内でプッシュされている声優もいないと思うので、おそらくソロデビューを前提とした「売り方」がなされていると思います。つまり、順調に行けばソニー系のレーベル(おそらくSACRA MUSICだと思います)からソロデビューとなるわけですが、そうした時にライブやその他イベントで発生する収益のうち「会社の取り分」であるところをソニー・ミュージックグループが総取りできるというわけです。そのことを考えれば、ソニーの側にとっても楠木ともりをプッシュする、例えば良いアニタイをつけて売れるようにするというインセンティブが発生していると言えます。これは、ソニーからデビューすれば、他のレーベルからデビューするよりもタイアップなどの面で優遇してもらいやすくなる」ということです。

 

そして、ソニーレーベルからのソロデビューが良いと考えている理由の2つ目ですが、それはレーベルの特徴のところでも言ったとおり「タイアップがとにかく強い」という点です。ソニー・ミュージックグループはそのグループ会社の中にアニプレックスがあり、アニプレックス製作のアニメと言えばだいたいそのクールの中でも「覇権候補」と言われるような注目作が多い印象です。その「注目作」のアニソンを歌える歌手というのはまた人気になっていく人が多い印象を受けます。それこそLiSAだったり藍井エイルだったりしたわけです。このようにソニー・ミュージックの場合、そもそもタイアップのアニメ自体が注目作であることが多く、アニタイをつけること=歌手として人気になるための手段という等式が成り立ちやすいのです。

 

つまり、楠木ともりの場合、ソニーであればタイアップ面で優遇してもらえる可能性が高く、またそのタイアップ自体も注目してもらいやすいという「二重のブーストがかかっている状態」と言えるわけです。

 

  • これらのメリットはソニーじゃなければ受けられないのか

確かにここまでのことを踏まえた場合、「ソニー系レーベルからアーティストデビューした楠木ともり」は歌手としてもかなり売れる可能性が高いと言えそうです。それでは、ソニー系レーベル以外からソロデビューした場合、ここまでに挙げてきたようなメリットというのはなくなってしまうのか、考えていきたいと思います。

 

 実際に楠木ともりと同じくソニー・ミュージックアーティスツに所属していた若手の声優で、ソニー系レーベルではないところからアーティストデビューした例があります。それは、キングレコードから2015年12月にソロデビューした水瀬いのりです。声優としては若手の中ではほぼトップの人気を誇っていると言ってもいいと思います*6

 

その若手の中でトップの人気の水瀬いのりについて、これまで出したシングルCDについてその売上平均を見ていくと、5枚目のシングルまでの平均で15,881枚になります*7。これは決して悪い数字ではないと思います。それどころか、今の若手女性声優のCD売り上げとしてはほぼトップクラスと言えるでしょう。

 

このままではレーベルに関係なく、人気声優であればCDは売れるんだという結論になってしまいそうなので、ここで比較対象を用意します。同じく2015年にデビューした若手女性声優のユニットTrySailです。ソニーが誇る若手女性声優アーティスト(ユニット)のシングルCD売り上げ平均はどうなのか、8枚目のシングル(~7th+1)までの平均で17,728枚を記録しています*8。つまり、声優としての人気では若手声優の中でほぼトップの水瀬いのりに対して、TrySailの方が平均で約2,000枚ほど多くCDを売っているということになります。このような結果となった要因としては、まず「タイアップの有無」が大きいと考えられます。TrySailに関しては、これまで出されたシングルすべてがアニメのタイアップという形をとっているのに対し、水瀬いのりの方は5つ出されたシングルのうちアニメのタイアップになるのは2つだけです。そもそもタイアップをつけていないシングル楽曲が多いというのもTrySailと比べてCDの売れ行きが伸びてない原因だと言えそうです。

 

それにTrySailの場合、『High Free Spirits』が3万枚超え、『adrenaline!!!』も2.5万超えとかなりの数字を出していますが、それぞれアニプレックス製作のアニメ『ハイスクール・フリート』『エロマンガ先生』の主題歌で、これら2作品は円盤も平均7,000枚を超える勢いで売れた程の人気作品であり、「タイアップの強さ」がCD売上枚数に寄与していることが伺えます。つまり、声優自身の人気以上にアニメのタイアップというのがCDの売り上げに与える影響は大きいということが予想できます。

 

その上で、このサイト(

 アニソンCD売り上げデータ保管庫 )における2つの指標(総合PTとヒットチャート)を見た時に、水樹奈々宮野真守というキングレコード男女のエースを除けばLiSA、Kalafina藍井エイルあたりのソニー系アニソン歌手が軒並み上位に来るわけですが、このことはアニプレックス製作アニメのタイアップをつけてもらえる彼らが順調にCD売上枚数を稼いでいるということを示していることになります。

 

水樹奈々に関していえば、これまでの実績がずば抜けているため、CDを買い支えるファンも多くついており、タイアップしたアニメの注目度や出来によらずともCDがかなりの数安定して売れてしまうという側面はあると思います。宮野真守に関しても同じで、固定ファンの数が非常に多いのでそれでCDが売れるという状態になっている部分はあるでしょう。しかし、あのような域に達するには相当時間がかかります。ソロデビューを果たした若手のCDがタイアップの力なしにいきなり2万枚も3万枚も売れるようになるとは到底思えません。特に2010年代に入ってから出てきたアニソン歌手はそれこそソニー系レーベルのLiSA、藍井エイル、EGOISTあたりに代表されるようにタイアップでのし上がってきたという人たちばかりです。それは、これからデビューして、アニソン歌手としての地位を高めていこうとしている人たちについても同じことが言えると思います。

 

ソニー系レーベルの強みは「タイアップの数を多くつけられること」と「タイアップした作品が比較的売れやすい」ことです。とにかく、人気のアニメのタイアップをつけてもらえるかどうかがアニソン歌手としての人気・地位を高めていく上では重要になってきます。実際に、近年売れているアニソン歌手にソニー系レーベルの人が多いのは、このことを如実に示しているのだと思います。これからきっとソロデビューすることも視野に入れているだろう楠木ともりさんに関しても、アニソン歌手としての大きな成功を収めることを狙うのであれば、やはりソニー系レーベルからのデビューが最善だと言えるのではないでしょうか。

 

*1:こういった企業は総合エンタテインメント企業とも言われる

*2:17年2月に東山奈央、同年7月に安野希世乃、18年1月に鈴木みのりがそれぞれCDデビュー

*3:来年3月には解散が決まってしまいました‥

*4:キャラソンはかなり乱発気味ですが、NBCの意向でしょう‥

*5:TrySailやスフィアのようなユニットありきのソロ活動の場合は除く

*6:あくまでも参考程度に 

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*7:出典

 アニソンCD売り上げデータ保管庫: 水瀬いのり

*8:出典

 アニソンCD売り上げデータ保管庫: TrySail(麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜)