スクスタ17章の感想とあれこれ

久々にブログを書こうかなと。テーマはスクスタとラブライブシリーズの話になります。

自分が虹ヶ咲を本格的に追い始めたのは、トキランのリリース(18年11月)〜品川KMF(19年3月)の間くらいなので、そこから1年半以上経ったわけですが、今回更新されたラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS、通称スクスタの17章は虹ヶ咲の歴史においてひとつの大きな節目となる章だったと感じています。昨年9月にアプリがリリースされて以降続いてきたメインのストーリーがひと段落した章でもあり、スクスタはここから新たなフェーズに入っていくことになるだろうと思います。

 

  •  17章のストーリーおさらい

歩夢の配信の効果もあり目標としていた人数のボランティアが集まったことで、ついにスクールアイドルフェスティバルが開催されるというところから17章はスタートします。当初はスクールアイドルに対して否定的だった栞子も、これまでのストーリーを経てスクールアイドルフェスティバルの開催に協力するようになり、すっかり同好会のメンバーとも打ち解けていきます。

そしてスクールアイドルフェスティバルの開催当日を迎え、会場が熱気に包まれる中、「あなた」はある人物と出会います。これまでは文字の上でしか出てこなかったスクールアイドルフェスティバルかつての主催者、薫子です。薫子はなにやら栞子のことを探している様子だったのですが、ここでは特にその理由は言わずに別れます。その後、観客席で「あなた」と栞子は確かな熱を感じながら同好会のメンバーによるオープニングアクトを見ることになります。栞子は、適性など関係なく「やりたい」「楽しい」という感情が優先されるスクールアイドルの素晴らしさに魅入られていきます。

スクールアイドルフェスティバルでは、スクールアイドルたちが考えたさまざまな催しが開かれます。μ's vs 虹ヶ咲の対決再びや、スクールアイドル愛のプレゼン対決など、こういうシナリオこそ世代を超えた共演のあるスクスタの醍醐味だと感じます。裏方を務める「あなた」や栞子、今回のイベントのために集まった1000人規模のボランティアの人たちの尽力もあり、スクールアイドルフェスティバルは大盛況のまま進んでいきます。

物語として大きな佳境を迎えたのは、薫子と栞子が出会うシーンです。ここで(散々匂わされてはいましたが)はじめて2人が姉妹であることが明かされます。三船の跡取りとして安泰だった薫子の地位が、スクールアイドルなんかにのめり込んだせいで崩れてしまった、そのように考えていたからこそ、栞子はスクールアイドルを「無駄の象徴」として嫌い、人々は適性に見合う生き方をした方が幸せであると考えるようになっていったのです。ただ、薫子と同じようにスクールアイドルに入れ込んでいた「あなた」や同好会のメンバーが真剣にやっている様子を見ることで考えを改めていき、自身もスクールアイドルの魅力にとりつかれていきます。そんな栞子に対し、薫子は「スクールアイドルを応援するだけでいいのか」と疑問を投げかけます。実際、同好会への体験入部なども経てスクールアイドルの魅力に気づいた栞子にとってはハッとさせられたところだと思います。ただしここでは、まだ自分は裏方に徹する方が性に合ってるといった感じで、踏み切れない様子でした。

そしていよいよスクールアイドルフェスティバルはフィナーレを迎えます。終演後も鳴り止まないアンコールの声に応えようと、μ's・Aqours・虹ヶ咲の27人は気合を入れます。そんな中、歩夢が栞子に「一緒にステージに出よう」と誘います。最初は急な誘いに戸惑いを隠せない栞子でしたが、同好会の他のメンバーも歩夢と同じく栞子に出てほしいと頼んだことで、栞子の気持ちも少しずつ傾いていきます。それでも「私には向いていないから」とあくまでも裏方にい続けようとする栞子に対して、歩夢は「大切なのはやりたいかどうか」と説得します。この流れ自体はアニメで千歌が花丸をAqoursに誘った時と似てますね*1。そして栞子を含めた28人での「TOKIMEKI Runners」のステージが実現します

この展開自体も予想できたこととはいえ、個人的にはかなり意外でした。特に驚いたのは、ここでプレイすることになる「TOKIMEKI Runners 17章ver」で栞子の3Dモデルが用意されていたことですかね。まさかSaint Snowよりも早く実装されることになるとは…。ガチャとかもそのうち出てきそうです。そこはとりあえず置いておいて、こうしてスクールアイドルフェスティバルは大成功に終わるのですが、その後正式に「10人目のスクールアイドル」として栞子は同好会に加わります。栞子加入と合わせるかのように「あなた」は短期留学で2ヶ月ほどいなくなってしまうそうですが。その「あなた」に2ヶ月後成長した同好会の姿を見せると約束したところで、17章は終わりとなります。

 

  • 三船栞子というキャラのポジション

個人的には「ここを変えちゃうのか」となったところでもあります。というのも、栞子は「あなた」という存在がいる虹ヶ咲において、「あなた」と近いポジションで別のアプローチを仕掛けることのできる「名前付きのキャラクター」であり、いわゆる「1Pキャラクター」である「あなた」と、従来のラブライブの様式に則った「9人のメインキャラクター」である同好会のメンバーを地続きにさせられるポジションだと思えたからです。「9人の物語」としての側面が強いラブライブのこれまでの作品の中で、スクスタの「あなた」という存在はかなり異質なものに感じられたのですが、そこを上手く相対化させることのできるキャラクターとして栞子は貴重な存在だったと感じるわけです。

だからこそ、栞子を「あなた」に近いポジションから「10人目のメインキャラクター」に移すことは、結局「あなた」を異質なものに戻してしまうことに繋がるのではないか、そのように考えてしまうところがあります。この点に関しては、今後のストーリー展開を見てから判断したいところですが、とにかく今回のシナリオについては思うところがある、というのは確かだと言えます。

そもそも論として、虹ヶ咲はこれまでずっと「9人のメインキャラクター」で活動してきて、それは雑誌の誌面上の活動だったり、WEB上での記事や動画を通じた活動だったり、キャストの配信・イベント・ライブによる活動だったりしたわけです。そこにこのタイミングで新しく10人目が追加されるとして、どのような心持ちで受け入れたらいいのか、難しいところです。今回わざわざブログ記事にしたのも、ここを整理したいなと思ったからです。別に「栞子の加入が嫌だ」と言いたいわけじゃなく、シンプルに「どういう考え方や心情を持ってすれば、今回の栞子加入を受け入れやすいのか」を書き起こしておきたいと感じたのです。

 

今回の栞子加入はいわゆるニチアサにおける「追加戦士」的な文脈であったと見ることができます。正直自分はニチアサにはかなり疎いので、そこで「追加戦士」がどのように描かれるのかを詳しく論じることはできないのですが、もともといたメインキャラクターに後から追加で新しいメインキャラクターが加わる、というのはまさしく「追加戦士」の形ということができるでしょう。

たとえばニチアサでない深夜アニメなどにおいても、この「追加戦士」的な手法が取り入れられていることは度々見られます。しばらくは決まった人数のメインキャラクターを動かしておいて、少し時間を開けたところで新しいメインキャラクターを出す、というのはきららなんかでもよく見られる手法だと思います*2。むしろ、ラブライブのように「9人でやる」と決めたら9人でやりきるようなコンテンツの方が珍しいといえるかもしれません。特にμ'sは「9人であること」に非常に強いこだわりを持っていたので、追加戦士が来るようなことはあり得なかったと思います。

μ's(アニメ)の場合、絵里と希が加入して9人になった後は他の誰かが加入することも、既存のメンバーの誰かが抜けることもありませんでした。ことりの留学騒動なんかはありましたが、それが落ち着いた後には「いまいる9人でラブライブをやりきる」というところは一貫しており、3年生が卒業でいなくなるところでμ'sはおしまいにするという、きれいなストーリー展開でした。「ラブライブ=9人の物語」というのはサンシャインにも引き継がれていく要素ではありますが、ことその土台を築いたのはこのようなμ'sのストーリーであったと言えます。

さて、前述したようにサンシャインにおいても「ラブライブ=9人の物語」という要素は引き継がれるのですが、ここではμ'sの時とはやや変わった様相を呈してきます。劇場版で示されたように、Aqoursは「9人であること」にそこまで執着していません。実際、アニメの1期13話においても「9人だけじゃなく浦女のみんなで」という側面が強調された描写もあったくらいです*3。あくまでμ'sをサポートする立場に留まっていたひふみトリオに対し、よいつむトリオは同じステージに上がることを考えた、ここの差は2つのグループを語る上でも結構重要な部分だと考えています。

そしてサンシャインにおいてμ'sの時との大きな違いとして出てくるのがSaint Snowの存在です。μ'sにはA-RISEというライバルユニットが存在しましたが、こちらはまさしく好敵手としてμ'sの前に立ちはだかったのに対し、Saint Snowは「もう1つの主人公」的な共に成長する仲間として描かれます。そして、2期9話ではついにAqoursとの混合ユニットであるSaint Aqours Snowが登場します。劇場版でもスポットが当てられるなど、まさしく「10人目、11人目のメインキャラクター」としてのポジションを確立しているわけです。

 

  • Saint Snow=サンシャインにおける追加戦士」とする見方について

ようするに、見方によってはSaint Snowの2人はラブライブ!サンシャイン‼︎における「追加戦士」に当たるのではないかということができます。1期の時点ではどちらかというとA-RISE的な「立ちはだかってくる好敵手」として描かれていたようにも見えますが、2期の8話あたりから「10人目、11人目のメインキャラクター」としての描写に切り替わっていったと感じます。これはつまり、物語がある程度進んだ段階でメインキャラクターが追加される=「追加戦士」の文脈であり、この見方を適用すれば栞子の前にすでにラブライブは「追加戦士」を作っていたことになります。

一方でやはり違うという見方もできます。結局Saint SnowAqoursとは別のユニットであり、Aqoursそのものはずっと9人のままです。劇場版では理亞をAqoursに加入させるという話も持ち上がりかけましたが、「それは違う」とルビィがきっぱり否定します。AqoursにはAqoursとして過ごした時間の積み上げがあるのと同様に、Saint SnowにはSaint Snowとして過ごした時間の積み上げがあり、ここが一本線になることはありません。「追加戦士」というのであれば、Saint Snowの線がAqoursの線に合流するように思えますが、そのようなことにはなっていない時点で、Saint Snowラブライブ!サンシャイン‼︎における追加戦士である」という見方は成立しないのです。

 

  • 今後の展開について

さて、やはり今回の栞子加入はラブライブにおいて初めて「追加戦士」的な文脈が適用された事例であり、ファンの中にはもしかしたら受け入れ難く感じている人もいるかと思います。正直自分自身も不安に感じる部分はいくつかあります。特にラブライブの目玉であるキャストによるイベント・ライブ等の活動の部分ですね。ここは本当に9人でずっとやってきた部分でもあるので、今後どのようにしていくのか読めないところです。

CVの小泉萌香さんはアミューズ所属の舞台女優兼声優であり、レヴュースタァライトの大場なな役などが有名な人です。ななといえば相方ポジションの純那を演じるのがラブライブでもお馴染みの佐藤日向さん(アミューズ)なので、Saint Snowがスクスタに参戦した暁には理亞と栞子の絡みも見てみたいところです(笑)。スタァライトは、キャストによる舞台やライブなどを次々と展開しており、小泉さんはそこでメインを張るくらいなので、その辺りの実力は確かかと思われます。そのため、仮に栞子役としてライブに出ることになっても高レベルなパフォーマンスを期待できます。

ただ、ライブパフォーマンスの面で問題がなかったとしても、トークやバラエティ的な部分で他の9人に溶け込んでいけるのかという問題もあります。この点に関しては同じくアミューズ所属の前田佳織里さんがすでにいるので、案外すぐに溶け込んでいくような気もします。そもそも、実際に小泉さんががっつり虹ヶ咲の活動に加わるのかはわかりませんが、現状ではいろんな可能性が考えられるということです。

直近だと3rdアルバムの収録内容にも注目したいです。3rdアルバムは全12曲収録ということが明かされており、現時点で各キャラクターのソロ曲9曲は試聴動画も公開されています。1stアルバムと2ndアルバムはソロ曲9曲と全体曲1曲という構成だったので、それよりも2曲分今回のアルバムでは曲が多いということになりますが、このうちの1つが栞子のソロ曲という可能性も十分考えられます。その場合、「10人曲」というのが新たに作られる可能性も考えなければなりません。とにかく、今回のスクスタのシナリオ更新によって、この辺りの可能性は一気に増えたといえると思います。

正直、自分自身としても今回の栞子加入についてはどう捉えればいいのか分かりかねてる部分があるのですが、「スーパースター‼︎」の展開とも合わせてラブライブというコンテンツが「9人の呪縛」から解き放たれようとしているのかもしれません。そして「追加戦士」を出せるようになること自体はコンテンツにとって大きなメリットともなり得ます。その辺りのことも含めて、今後の「虹ヶ咲」「ラブライブ」には引き続き注目していきたいと考えている自分でした。

*1:どうでもいいことですが、誘われる側のキャラの声優がどっちもアミューズだったりします

*2:ステラのまほうの池谷乃々とか

*3:この展開については批判も結構多いのですが