優木せつ菜役楠木ともりとの出会い
僕が最初にまともにラブライブ!シリーズに触れたのは2017年10月〜12月に放送されたラブライブ!サンシャイン!!のアニメ2期でした*1。その頃はどちらかというと特定のコンテンツに軸足を置くよりも、その時期で放送されているアニメを何本か見ながら気に入った作品についていろいろ語ったりするタイプのオタクで*2、ラブライブ!サンシャイン!!についても「とりあえずやっているから見てみるか」くらいの気持ちで見ていた感じです。少なくともその後のアニガサキやスーパースターのアニメを見る時ほど、サンシャインを見ていた当時の自分は熱量を持って作品に向き合っていたわけではなかったですし、自分にとってラブライブ!サンシャイン!!は「たくさん見ているアニメの中の1つ」という位置付けでした。まあ、強いて言えば「ラブライブ!」と聞いた時に、全く触れたことがない作品というわけではなくなったというのがこの時の自分の状態です。
時は進み2018年の夏頃、アニメだけではなく声優にも関心を示していた当時の自分はアベマでとある番組を見つけます。それが『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 AbemaTVウルトラゲームスイメージガール決定戦』です。声優の配信番組とかを見るのも好きだった自分にとって、サンシャインで知ってるラブライブ!シリーズで、さらに鬼頭明里や楠木ともりといったなんとなく名前は知っている声優もいて、ゲーム対決などのバラエティ色の強めな内容というのが「見てみようかな」と思えるポイントとして大きかったような気がします。そんな感じで見始めたこちらの番組だったわけですが、見ていくうちに"切れ者"ぶりを発揮する楠木ともりに徐々に惹かれていったというのがともりる推しへの第一歩を踏み出した経緯になります。本当にただの直感ですが、「この子(楠木ともり)はもしかしたら凄い存在なのでは」と思い始めたのがこの時だったわけです。
さらに時は流れて2018年のおそらく9月頃だと思いますが、虹ヶ咲の1stアルバム『TOKIMEKI Runners』の試聴動画が公開されたくらいの時期にたまたまゲーマーズで買い物をしていて、試聴動画の中の『CHASE!』の部分をたまたま聴いた時、自分の中で確実に何かが動いたような感覚に襲われました。Abemaの番組で見ていた楠木ともりが力強さと高い技量を感じさせる歌声で歌うその曲にその時不思議なほど惹かれてしまったのを覚えています。家に帰ってすぐにその試聴動画をヘビロテし、それ以降すっかり虹ヶ咲や他のラブライブ!シリーズの曲にどっぷりハマっていきます。
ダメ元でリリイベに応募。まさかの当選で一気に虹ヶ咲の沼へ
さて、試聴動画を聴いて「これは買わなきゃダメだ」と思った『TOKIMEKI Runners 』のCDを買い、『CHASE!』を始めとした虹ヶ咲の楽曲にすっかり夢中になっていた2018年の11月頃ですが、CDにはどうやらイベントの抽選券がついているようで、日程も土曜日で問題なさそうだったのでとりあえず応募してみることにします。μ'sでもAqoursでもライブに行きたければCDを5枚とか10枚とか買うのが当たり前と言われていた当時のラブライブ!シリーズのイベントで800人程度のキャパシティしかない虹ヶ咲のリリイベについては「まあ当たらないだろうな…」くらいの気持ちで応募していたので、当選のメールが来た時は本当に驚きました。イベントに行くからにはちゃんと予習もしようということで、『CHASE!』以外の楽曲についても今まで以上に聴き込むようにし、万全を期して当日を迎えます。そうしたらみんな本当に良かったです。自分はそれまでにラブライブのイベントには参加したことがなかったので、グループとソロの違いとかはあまりわからなかったですが、ソロで一人一人がパフォーマンスをする姿はとても眩しく、それぞれが個性を活かしてステージを盛り上げるライブのあり方は本当に魅力的だと感じましたし、このイベントを見て「虹ヶ咲のことをこれからも応援していきたい!」という気持ちはより強くなりました。
ただ、その中でも優木せつ菜として一切出し惜しみのない全力のパフォーマンスをする楠木ともりの姿はひときわ自分の脳裏に強く焼きついたのを覚えています。特に、ラスサビでのシャウトは初めて聴いた時、「自分はこれを聴くために今日ここに来たんだ」と心から思いましたし、「優木せつ菜・楠木ともりに懸けたい」という気持ちにさせられました。今思えば、この時点でせつ菜・ともりる推しという自分のスタンスが固まったように感じます。
ヘッドライナーとして最高の景色を見せてくれた1stライブ
2019年12月14日・15日に東京・武蔵野の森総合スポーツプラザにて行われた虹ヶ咲の1stライブ。そこで投票の結果によりヘッドライナーという役割を優木せつ菜とそれを演じる楠木ともりが担うことになります。虹ヶ咲としては最初のナンバリングライブであり、初めて「アリーナクラス」の会場で行われ、時期としてもスクスタが9月にリリースされてからのライブということできわめて重要なライブとなった1stライブにおけるヘッドライナーなわけですから、想像を絶するような重圧を背負っていたと思います。しかし、彼女がそこで見せたパフォーマンスは「本気系スクールアイドルの優木せつ菜」そのものであり、3月のリリイベ(校内マッチングフェスティバル)の時からさらにパワーアップした歌声と想いのこもったシャウト、それから『MELODY』で作り上げる「大好き」に溢れた世界観、そしてそれらの楽曲に込められた思いをどこまでもまっすぐに伝えたMC、ヘッドライナーとしてのせつ菜とともりるが1stライブのあの空間に残したものは言葉では言い表せないくらい大きなものだったと言えるでしょう。
そして約1ヶ月後のラブライブ!フェスではさいたまスーパーアリーナに集まったラブライブ!シリーズのファンおよそ3万人を前に『CHASE!』を披露し、文字通り会場を熱狂に包みます。ラブライブ!フェスに関して言えば決して当時の虹ヶ咲を目当てにしていたオタクは多いとはいえず、バリバリの現役グループとしてドームクラスの公演を重ねていたAqoursや約4年ぶりの復活で数々の伝説を残してきたμ'sを見に来た人たちが大半だったわけで、その中でも『CHASE!』一曲で会場の雰囲気を変えてしまった楠木ともりがいかに凄い存在であるかということです。
コロナ禍でもがき続ける虹ヶ咲と楠木ともり
2020年の春頃になると、皆さんご存知の通り世の中はコロナによる自粛ムード一色となってしまいます。当然ライブの開催なんてもってのほかで、一時期は生放送やラジオの収録、アフレコなんかもストップしてしまう事態となってしまいました。虹ヶ咲の活動に関しても当然コロナの影響は大きく、2ndライブは無観客での開催となります。2ndライブは「無観客ライブの難しさ」のようなものを強く感じるライブ内容となっていましたが、個人的な印象としてともりるに関しては良い意味で力の抜き方を覚えたようにも見え、厳しい状況の中でも前を向き続けていたように感じます。ともりるは2ndの無観客開催が決まった時にも「新しい試み」としてポジティブな発信をしていたのが印象的で、コロナによる有観客ライブの相次ぐ中止で悶々としていた自分にとってもそれがすごく救いになったのを覚えています。
そしてこの時期の虹ヶ咲の大きな出来事といえばやはり2020年10月からのTVアニメの放送でしょう。一時期はコロナの影響でアフレコやアニメの制作が止まっていた時期もあり、しばらく放送時期等の情報も出ていなかったことから「果たしていつになるんだろう」と思っていた虹ヶ咲のアニメ放送でしたが、9月の2ndライブにおいて10月から放送であることが明かされ、そこからの3ヶ月間は毎週本当に楽しく過ごすことができました。
そして虹ヶ咲における新たな試みとしては2021年3月に行われた「校内シャッフルフェスティバル」も象徴的と言えそうです。1stアルバムのソロ曲*3を他のメンバーが歌うという試みは、各メンバーへの解釈を深めるという意味でもとても有意義なものになっていたと思います。その中で楠木ともりは栞子のソロ曲『決意の光』を披露。せつ菜の曲とは打って変わって「和」のテイストを感じさせる楽曲でしたが、せつ菜らしい熱さを前面に出す歌い方で、彼女自身のさらなる可能性を感じました。この時期は虹ヶ咲としても、優木せつ菜や楠木ともりとしても新たな試みが続く時期で1stの頃とは違ったワクワク感に溢れていたのを覚えています。
パフォーマンス制限と楠木ともりが優木せつ菜でいることの意味
コロナ禍という大きな困難がありながらも、虹ヶ咲としても優木せつ菜としても確実に前へと進み続けていた2021年の4月、突然のリリースで界隈に激震が走ります。それは楠木ともりが生来の性質により激しい運動をすると関節に痛みを生じることから、パフォーマンスに制限がかかるというものです。つまり、それは楠木ともりが優木せつ菜役として見せていた「全力パフォーマンス」に制限がかかるということであり、一人のファンである自分にとっても、そして何より彼女自身にとっても辛い話だったということは想像に難くありません。3rdライブにおいては一部トロッコ曲披露の際にステージの裏に下がる以外は普通にパフォーマンスできていたため当時の自分は「過度に心配することでもないのかな」と思ってしまったのですが、9月頃にはより明確に「激しい動きを伴うダンス等は控える」とのリリースがあり、"普通にパフォーマンス"が難しい状態であることが知らされます。10月のA・ZU・NAのファンミでは激しい動きを伴うダンスがともりるの動きから無くなっており、さらに年末のカウントダウンライブや2022年2月の4thライブにおいてはごく限られた時間のみでのパフォーマンスとなり、1stライブの頃はあんなに楽しかった虹ヶ咲のライブをどこか素直に楽しめない自分がいることに気づいてとても悔しくて嫌な気持ちになっていました。
4thライブに関しては全員曲はもちろん、A・ZU・NA曲でもともりるがステージ上に出ることはなく、「それでもスカーレット色のブレードを振ってくれた人がいた」ということを彼女のMCでは触れていましたが、正直自分にはそれはできませんでした。今思えば自分の弱さでしかないと思うのですが、4thに参加していた時は「せつ菜・ともりる推し」としてあのライブを見るのが辛く、ソロ曲の『ヤダ!』の時以外はブレードもスカーレット以外の色を振り続けていましたし、着ていたTシャツもせつ菜ではなくしずくのイラストが描かれたものにしていました(懺悔)。ここまで書いておいて本当に身勝手なのですが、それでもやはり「せつ菜はともりるにしかできない」と考えていましたし、なんとか続けられる方法を探してほしいと願いました。個人的にそう思っていたのは「全力でパフォーマンスする」というのもそうですが、楠木ともりの考え方や生き方のような部分がどこか優木せつ菜に通じるところがあると感じられ、そんなともりるが演じるからこそ優木せつ菜は「生きたキャラクター」でいてくれると思っていたからで、それは決してその時点でのともりるがステージ上で全力のパフォーマンスをできなかったとしても、積み重ねてきた部分が証明しているという考えでした。
「できること」と「できないこと」と本人の決断
そんな状態で、虹ヶ咲と楠木ともりに関して悶々とした日々を過ごしながら迎えた5thライブ。激しい動きを伴うダンスはできないため、アニメーションと同じ動きではないものの、一部の曲を除いてずっとステージ上でパフォーマンスし続けるともりるの姿がそこにはありました。正直4thライブでの状態を見て、5thでも「いない」ステージを覚悟していたため、「いる」ステージがあまりにも眩しくて、眩しくて、ずっと「この光景が見たかったんだよ」と思いながら全力でライブを楽しむことができました。5thライブでのともりるはまさしく「できること」はたとえ自分が完全に納得できるあり方じゃなくてもやるということを実践してきており、個人的にそのことがすごく嬉しいと感じました。そして、「これからもこういう形でいいから続けてほしいな」とより一層思えるライブとなりました。ただ、だからこそ僕はともりる推しとして彼女のことを100%理解できているわけじゃないというのを改めて痛感させられることにもなります。
2022年11月1日、ついに「その日」がやってきてしまいました。今にして思えばこういう決断になったのも前向きに捉えられるところが大きいです。まずはこれが「楠木ともり自身の決断であるということ」、そして今回はあまり詳述はしませんが「すごく良い引き継ぎ相手がいてくれたこと」です。特に前者に関しては、ラブライブ!の運営側が「踊れない楠木ともり」を切ったわけではないということで、結果的に「こういう決断なのも受け入れるしかない」と思えた1つのポイントと言えます。彼女自身がそのような決断に至った理由として、本人よりこのようなコメントが出されています。
"楽屋モニターで見たステージに立つみんながあまりに眩しくて可愛くてかっこよくて。
こんな姿をずっと見たいな、見てほしいなって思ったのがひとつの決定打でした。"
5thライブで今の彼女にできる最大限を見せてくれたことで、一方で「できないこと」も浮かび上がってきてしまった側面は間違いなくあったと思います。僕はそれでも楠木ともりが優木せつ菜でい続けてほしいと思ってしまったのですが、誰よりもせつ菜と向き合いせつ菜のことを大切に思うともりるだからこそ、自分の「できないこと」でせつ菜の「全力」を表現できないところにどうしても納得がいかなかったのではないでしょうか。そして、僕自身せつ菜とともりるの「全力パフォーマンス」に強く心を打たれた人間でもあるので、やはりともりるのこの決断については受け入れるしかないと感じています。
これからの優木せつ菜、これからの虹ヶ咲、これからの楠木ともり
そして僕は今回の記事の序盤でも言いましたが、優木せつ菜を演じる楠木ともりの存在があったからこそ虹ヶ咲やラブライブ!シリーズ全体に興味を持つことができたので、そこから積み重ねてきた「大好き」という気持ちを今後も大切にしていくことが、このような決断をしたともりるに向けてのファンとしてのできることなのかなと思いますし、それはこの先林鼓子が演じることになる優木せつ菜に対しても同じだと感じます。ここで宣言したいのは、僕自身はこれからも虹ヶ咲のオタクであり優木せつ菜のオタクであるということです。たしかに優木せつ菜に対しては「楠木ともりが演じているから」という見方をしていたのは否定しません。ただし、これからは「楠木ともりが演じていたから」、そして「林鼓子が演じていく優木せつ菜」のことをさらに好きになっていけたら個人的にも嬉しいですし、ともりる推しとしても胸を張れる気がします。
また、楠木ともり自身に関しても、優木せつ菜役としての活動は終えますが、声優・歌手としての活動はむしろまだまだこれからと言えますし、今後いろんなところで活躍を見られる存在になっていくことでしょう。ともりるのこの決断は「せつ菜にとってより良い決断」として彼女自身も決めた部分が大きいとは思うのですが、それがゆくゆくは彼女自身にも良い形で跳ね返ることになればともりる推しとしてもせつ菜推しとしてもこれほどに良いことはないと思っています。2023年3月31日から2023年4月1日へのそれぞれ踏み出した「一歩」が後で振り返った時に「良い一歩だった」と確信を持って言える日が来るまで、虹ヶ咲のこともせつ菜のこともともりるのことも応援し続けます。
最後に、これだけは伝えさせてください。
楠木ともりさん、今までせつ菜との二人三脚でいろんな最高の景色を見せてくれて本当にありがとうございます。あなたがずっと大切にされてきた「大好き」という気持ちを今度は林鼓子さん演じるせつ菜に向けても伝えていけたらと思っています。そして、楠木さん自身についても、自分なりの「大好き」の思いを持ちながら今後の活動を応援していけたらと思っているのでこれからもよろしくお願いします。せつ菜とともりるの未来がきっと明るいものになることを信じて・・