Liella!メンバーについてじっくり考えたい「桜小路きな子・米女メイ・若菜四季・鬼塚夏美」編

みなさん、こんにちは。

 

立て続けのブログ更新となります。

今回は『Liella!メンバーについてじっくり考えたい』シリーズの第3弾の更新です。これまでの記事はこちら↓

Liella!メンバーについてじっくり考えたい「澁谷かのん・唐可可」編 - よしのきららのブログ

Liella!メンバーについてじっくり考えたい「平安名すみれ・嵐千砂都・葉月恋」編 - よしのきららのブログ

 

第3弾となる今回は桜小路きな子・米女メイ・若菜四季・鬼塚夏美編です。

 

目次のようなもの

・澁谷かのん〜「才能」「挫折」にフォーカスした人物像〜

・唐可可〜可可にとってのLiella!〜

・平安名すみれ〜"グソクムシ"が主役に変わるまでの軌跡〜

・嵐千砂都〜対人関係の独特なバランス感覚〜

・葉月恋〜信念を曲げない強さと純粋さ〜

↓↓↓今回はここから

・桜小路きな子〜Liella!にきな子がいることの意味〜

・米女メイ〜"ファン"だったからこそのスタンス〜

・若菜四季〜四季の秘めたるポテンシャル〜

・鬼塚夏美〜人間としての夏美の強さ〜

 

 

  • 桜小路きな子〜Liella!にきな子がいることの意味〜

かのんたちが進級して2年生になった年に最初の1年生メンバーとしてLiella!に加入した桜小路きな子。出身が北海道であり、上京して結ヶ丘に入学してきた彼女ですが、最初の方の印象としてはまさしく「都会を知らない純朴な田舎娘」という感じの雰囲気を持つ子でした。1期生の5人はそれぞれの思いや事情を抱えつつも「一人一人が何かしらの特別な素質を持っているスーパースター集団」として描かれていたのに対し、きな子は「普通であること」アイデンティティのようにも感じられるところがあり、そんな彼女がLiella!に入ったとして1期生の5人にちゃんと並び立てるのか、そんなことを当初感じたように記憶しています。

実際、2期2話でスクールアイドル部に入部したきな子は2年生の練習メニューについていけず、一時的に練習メニューを軽くする方向に行きます。きな子が2年生5人に並び立つのではなく、2期生5人がきな子のレベルに合わせてしゃがみこんだようなカタチです。しかし、2年生の5人は1期の最後にラブライブの東京大会でSunny Passionに負けた悔しさから次は絶対勝ちたいという思いを抱いた状態で2期を迎えているわけですから、それで良しということにはできません。2期2話に関してはそこの「何を目指しているのか」の部分を再確認するという意味でも重要なエピソードだったと言えますが、結果的にきな子が決意を新たにしたことで再びLiella!は優勝に向かって走り出すことができたわけです。優勝を目指す"だけ"なら5人で続ける選択肢もあったかもしれない、結ヶ丘にスクールアイドルを根付かせようと新入部員を増やしたければ練習メニューを軽くした方が多くの新入部員に入ってもらえたかもしれない、そのいずれでもなく結ヶ丘にスクールアイドルを根付かせた上で優勝も目指したいというLiella!としての目標を明確にし、それに向かって走り出せたのは間違いなくきな子が1年生で最初の新入部員として入ってきたからでしょう。

そして、2年生5人と比べて何か秀でた素質や才能があったわけではないからこそLiella!の6人目のメンバーとしての加入に大きな意味があったということをここまで述べてきましたが、2期を通しての彼女の役割はそこで終わりではありません。ラブライブ!スーパースター!!』はその名の通りスーパースターであるLiella!の物語なわけですから、きな子もそのうちの1人であるということです。きな子に関しては、2年生5人にとっては「最初に出来た後輩」であり、やはりそのポジションは特別と言えます。中でも象徴的なのが、2期8話でかのんと出かけた時のきな子です。「かのん先輩とっすか?行くっす!行くっす行くっす〜♪」「かのん先輩とお出掛けっす。ルンルンっす〜♪」といった感じでかのんと出掛けるのを心から楽しそうにしているところが描かれていますが、先輩目線で自分とのお出掛けをこれほど素直に喜んでくれる後輩が可愛くないわけがありません。この時のきな子の視点がその後の「Chance Day, Chance Way!」のステージ場所を決めるヒントとして機能しているのもそうですが、Liella!にとってのきな子の存在が2年生5人と同じように「オンリーワン」の特別な存在になっていると言えるわけです。10話ではかのんと協力して作詞担当としても活躍するシーンも描かれており、2期を通してLiella!の一員として立派になっていくきな子の姿が描かれています。

 

  • 米女メイ〜"ファン"だったからこそのスタンス

Liella!に憧れて結ヶ丘への入学を決め、中学からの同級生・若菜四季の後押しもあり(結果的には双方で後押しし合って)Liella!への加入を果たすこととなる米女メイ。ラブライブ!シリーズではこれまでもスクールアイドルに対して元々憧れを持っていたメンバーが描かれることはありましたが*1、最終的に自分が入ることになるグループに憧れていたのはメイが初めてになります。つまり、シリーズで初めて「そのグループのファン出身者のスクールアイドル」が生まれたということです。メイに関しては「Liella!のファン」としての目線と「Liella!のメンバー」としての目線を両方持つ貴重な存在だと言えます。

「Liella!がいる学校だから」ということで結ヶ丘を選ぶくらいLiella!に強い憧れがあり、練習場所を眺めるだけで表情が緩み、ライブを見れば号泣するというLiella!オタクっぷりを序盤から見せつけてくるメイでしたが、一方でそんな自分の感情に素直になれず四季が動くまでは実際のLiella!メンバーとは頑なに距離を置きます。メイにとっては憧れのLiella!と自分も一緒に活動したいという気持ちがある一方で、「自分なんかではLiella!に入っても役に立たない」「自分がLiella!に入ることで四季が一人になるのも嫌だ」という気持ちもあり、Liella!に入る決心がどうしてもつけられなかったわけです。しかし、四季が実際に動いたことで結果的に四季も自分と同じ気持ちを持っていることを知ることができ、ようやくLiella!に入る決心がついたメイは1人のスクールアイドルとして奮闘していくことになります。印象的なエピソードとしては2期の5話で今後も動画を公開していくと話す夏美に対して「1年生と2年生で実力に差があるって、はっきりわかっちゃうよなって…」と語り、その後の6話では「Liella!の力になれないならスクールアイドルやるつもりはない。少なくとも私はな」と語っているところです。ここでは「Liella!の力になりたい」「そのためには自分たちの実力不足をなんとかしたい」という彼女のスタンスがはっきりと示されています。7話ではゲームに夢中になって作曲に手がつかないという恋からの相談を受け、メイなりに恋の役に立てるように動いたり、9話ではすみれの提案を受けて揺れ動くメンバーの中で「負けちゃったらどうするんだよ」と言って受け入れようとするなど、行動の基準として「Liella!の役に立つこと」に重きが置かれているのがわかります。

そんなメイのスタンスが一つの実を結んだエピソードが2期10話と言えるのではないでしょうか。ラブライブ!の東京大会に向けて特訓が必要ということで、9人全員できな子の実家のある北海道に行くことになりますが、メイは恋と同じ作曲チームとして作業を進めるところが描かれます。恋とは一緒にゲームの協力プレイをするくらいに打ち解けており、かなり信頼と期待をされていることも窺えます。可可と一緒にマルガレーテの発言に怒っているところもそうですが、メイは1年生の4人の中でも特に「Liella!の一員として」の感情を強く持っているような印象もありますし、東京大会の『Sing!Shine!Smile!』、そして全国大会の『未来の音が聴こえる』での9人一体となるようなパフォーマンスはメイ個人を掘り下げる上でも外せないポイントになっていると感じます。

 

  • 若菜四季〜四季の秘めたるポテンシャル〜

中学時代からの同級生の米女メイがきっかけでスクールアイドルに興味を持ち、自身のメイへの後押しから今度は"逆後押し"を受ける形でLiella!に加入することとなったミステリアスガール、若菜四季。中学時代はそんなに人と関わるタイプでは無かったとのことですが、高校では主にメイのための行動で自ら動こうとする場面が多く、見た目によらず積極的な性格の持ち主としても描かれています。また、虹ヶ咲の天王寺璃奈にも負けず劣らずの発明の天才でもあり、謎の機械や薬を次々と開発するような凄い技術を持っており、1年生の中ではひときわ「特別」な部分が強調されている存在と言えます。そうした部分というのはスクールアイドル活動においてもしっかりと発揮されていくことになります。

人格的な部分について触れていくと、彼女の思考の中心は「米女メイ」です。たとえば千砂都にとってのかのんであったり、すみれにとっての可可であったりなんかも非常に大きな存在として描かれているところはありますが、これらはあくまで「今の嵐千砂都」「今の平安名すみれ」にそれぞれ強い影響を与えた人物であるという描かれ方なのに対して、四季にとってのメイは思考の中心そのものです。2期1話の時点でスクールアイドル部への一歩を踏み出そうとしていたきな子を後押ししたのも、先述したような「メイのため」に見せた行動力の部分であり、さらに2期7話では最終的にのぼせてしまうほどにメイのことをずっと考えている様子が描かれていました。ようするに若菜四季という人物は常にメイのことを想って行動しているのであり、ありきたりな表現ではありますが「誰かのためならどこまでも頑張れる」というその「誰か」が四季にとってはメイであるということです。

そんな四季ですが、スクールアイドルとしてのポテンシャルは1年生4人の中では一番高く、2期8話では、芸能活動の経験もありダンスもそれなりにこなせるすみれが苦戦していた平均台の上で難なくバランスをとってみせたり、10話では千砂都直々に「ダンスが1年生では1番得意」と言われたりしています。ラブライブ!スーパースター!!の2期においては元々スクールアイドルとして活動をして注目を集めるようになっていたスーパーな2年生5人と、その背中を追いかけながら自分たちもスーパーになっていこうとする1年生4人の関係性がストーリー上の大きなポイントとなってきますが、四季に関しては元々スーパーな2年生5人に実力の部分で一番肉薄できており、度々言及されてきた「2年生と1年生の実力差」の部分を埋める上でのキーマンであると感じています。また、この部分に関しては単に設定上そうであるということにとどまらず、実際のライブにおける若菜四季役大熊和奏のパフォーマンスによって担保されている部分も大きいです。3rdライブ*2で見てきた中でも大熊和奏のパフォーマンスに関してはダイナミックな動きのダンスと安定しながらも伸びのある歌声でレベルの高さを感じましたし、それらはすでに1st・2ndライブなどで多くの場数を踏んできた1期生とも引けを取らないものだったと思います。

四季は元々素質の面に恵まれている上に、「メイのため」であればどこまでも頑張れるという性格の持ち主でもあり、3期で描かれる「今後」が非常に楽しみな子でもあります。それこそ四季がセンターを務める新曲なんかが出てくればそういった若菜四季の秘めたるポテンシャルが最大限に発揮されるような気もしますし、そうした曲が出た時にライブでの大熊和奏がどのようなパフォーマンスを見せてくれるかにも期待していきたいところです。

 

  • 鬼塚夏美〜人間としての夏美の強さ〜

当初は「マニーを稼ぐため」という目的でLiella!に接近するものの、彼女たちとの関わりの中で次第に夢を追いかけることの尊さを思い出し9人目のメンバーとしてLiella!に加入することになる鬼塚夏美。Liella!に近づいた当初の目的こそ下世話ではあったものの、2期1話では悩んでいるきな子に「やってもいないのに向いているかどうかなんてわからない」と言って発破をかけたり、エルチューバー*3としても再生数が伸びないなりに色々と試行錯誤を重ねている痕跡が見えたりと、素の性格の部分では決して悪いわけではないというのは伝わるようになっていたかと思います。そんな彼女の本質は「折れない努力家である」と個人的には感じています。

夏美に関しては、本格的に物語に絡むようになるのは(先述した1話のセリフのシーンを除けば)2期5話以降ということになります。最初はお金目当てでLiella!に接近しますが*4、自身と同じく「人気や知名度でお金を稼ぐ」ということに造詣の深いすみれ*5によってその目論見に気づかれてしまいます。他のメンバーはあまりピンときていないところもあったようですが、目的として語っていた「Liella!をプロデュースして知名度アップに協力したい」というのがむしろ手段で、本当の目的は夏美自身のお金稼ぎであるということが明かされてしまったわけです。こうして追い込まれてしまった夏美ですが、それでもLiella!を諦められず次の一手に出たのが「1年生3人の分断」です。そうして結果的に1年生4人で北海道まで行くことになったわけですが、そこから夏美は変わっていきます

元々Liella!の内部分裂を演出しようとして1年生3人を2年生から引き離した夏美でしたが、彼女たちと行動していくうちに少しずつ心境に変化が現れてきます。その変化を象徴するようなシーンが2期6話できな子が「夢」について語った後、PCの画面を見ながら「まったく、くだらないんですの」と言って投稿する動画のサムネを切り替えるところだと思います。この時点で夏美が「自身のお金儲けのためにLiella!を利用してやろう」という考えではなく、真っ当にLiella!の練習風景を取材して動画にしようという考えに切り替えていたことが窺えたシーンです。その後、千砂都からの提案に萎縮してしまっていた1年生3人に発破をかけたところは夏美が元々「夢」に対する真剣さや諦めの悪さを持つ人物だからこそ、あのような言葉の掛け方になったのだと思いますし、それ以降は1年生3人と夏美で協力し合いながら練習風景を撮っていくところが描かれており、この時点で既に夏美の気持ちは「スクールアイドルとして3人と一緒に夢を見たい」という方向に固まっていたような気がします。直接勧誘をしてきたのはかのんですが、これはかのんが「そういう言葉」をかける能力に長けた人物だからであり、夏美の心を動かしたのはそこまでの1年生3人もそうであるということです。

閑話休題。この2期6話が象徴的ですが、Liella!の1年生(2期生)は2年生(1期生)と比較しても「4人1組」感が強く、同学年のメンバーで一緒にいることが多い印象です。スーパースターの1期は「一人一人の才能と個性」に強くフォーカスしていたのに対し、2期で描かれた2期生に関する部分は「4人集まった時の一体感」に強くフォーカスしている感じもあり、そこが「個」を重視する1期生と「集団」を重視する2期生の描写の違いなんじゃないかなと思ったりしています。閑話休題おわり。

結局、かのんの勧誘を受けてLiella!へ加入することとなった夏美ですが、6話挿入歌である「ビタミンSUMMER!」ではいきなりセンターを務めあげます。同じくかのんに直々の勧誘を受けたすみれは、その後可可に「センターにはすみれが相応しい」と言ってもらえるまでセンターには立たなかったのに比べると、あっさりとそこに到達したという感じもありますが、これは先述の通り夏美は元々諦めが悪い性格で、スクールアイドルになるまでにもエルチューバーとしていろんなことに挑戦していたことからもわかるように精神的にタフであることの証左だと思います。

 

  • おわりに

ここまでLiella!のメンバー9人分について個人的な解釈に基づく人物像の掘り下げを行ってきました。書いていく中で9人にそれぞれの個性や人格、考え方のようなものがあると感じられましたし、やはり自分はラブライブ!スーパースター!!という作品がそういった部分について真摯に描いている作品だからこそこれだけ好きになれたんだと思います。スーパースターのアニメは現状2期まで終了しており、3期の制作が発表されている段階です。3期では9人とそれに加わる3期生がどんな物語を紡いでくれるのか、非常に大きな期待を寄せていますということを記した上でこの記事の締めとしたいと思います。見てくださった方は最後までお付き合いいただきありがとうございました。それでは、また。

*1:無印では花陽が、サンシャインではダイヤとルビィが該当

*2:自分は宮城1、千葉1・2、大阪1、東京1、埼玉1・2日目に現地参加、宮城2、東京2日目を配信視聴

*3:ユーチューバーのようなものだと思われる

*4:お金目当てといってもLiella!から巻き上げたり騙し取ったりするわけではなく、Liella!の知名度を自身の動画の広告収入に利用しようと考えていた

*5:すみれ自身がそうしているわけではなく、ショウビズの世界の基本的な考え方として認識しているということ

楠木ともりとラブライブとこれまでとこれから

優木せつ菜役楠木ともりとの出会い

僕が最初にまともにラブライブ!シリーズに触れたのは2017年10月〜12月に放送されたラブライブ!サンシャイン!!のアニメ2期でした*1。その頃はどちらかというと特定のコンテンツに軸足を置くよりも、その時期で放送されているアニメを何本か見ながら気に入った作品についていろいろ語ったりするタイプのオタクで*2ラブライブ!サンシャイン!!についても「とりあえずやっているから見てみるか」くらいの気持ちで見ていた感じです。少なくともその後のアニガサキやスーパースターのアニメを見る時ほど、サンシャインを見ていた当時の自分は熱量を持って作品に向き合っていたわけではなかったですし、自分にとってラブライブ!サンシャイン!!「たくさん見ているアニメの中の1つ」という位置付けでした。まあ、強いて言えば「ラブライブ!」と聞いた時に、全く触れたことがない作品というわけではなくなったというのがこの時の自分の状態です。

時は進み2018年の夏頃、アニメだけではなく声優にも関心を示していた当時の自分はアベマでとある番組を見つけます。それがラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 AbemaTVウルトラゲームスイメージガール決定戦』です。声優の配信番組とかを見るのも好きだった自分にとって、サンシャインで知ってるラブライブ!シリーズで、さらに鬼頭明里楠木ともりといったなんとなく名前は知っている声優もいて、ゲーム対決などのバラエティ色の強めな内容というのが「見てみようかな」と思えるポイントとして大きかったような気がします。そんな感じで見始めたこちらの番組だったわけですが、見ていくうちに"切れ者"ぶりを発揮する楠木ともりに徐々に惹かれていったというのがともりる推しへの第一歩を踏み出した経緯になります。本当にただの直感ですが、「この子(楠木ともり)はもしかしたら凄い存在なのでは」と思い始めたのがこの時だったわけです。

さらに時は流れて2018年のおそらく9月頃だと思いますが、虹ヶ咲の1stアルバム『TOKIMEKI Runners』の試聴動画が公開されたくらいの時期にたまたまゲーマーズで買い物をしていて、試聴動画の中の『CHASE!』の部分をたまたま聴いた時、自分の中で確実に何かが動いたような感覚に襲われました。Abemaの番組で見ていた楠木ともりが力強さと高い技量を感じさせる歌声で歌うその曲にその時不思議なほど惹かれてしまったのを覚えています。家に帰ってすぐにその試聴動画をヘビロテし、それ以降すっかり虹ヶ咲や他のラブライブ!シリーズの曲にどっぷりハマっていきます。

 

 

ダメ元でリリイベに応募。まさかの当選で一気に虹ヶ咲の沼へ

さて、試聴動画を聴いて「これは買わなきゃダメだ」と思った『TOKIMEKI Runners 』のCDを買い、『CHASE!』を始めとした虹ヶ咲の楽曲にすっかり夢中になっていた2018年の11月頃ですが、CDにはどうやらイベントの抽選券がついているようで、日程も土曜日で問題なさそうだったのでとりあえず応募してみることにします。μ'sでもAqoursでもライブに行きたければCDを5枚とか10枚とか買うのが当たり前と言われていた当時のラブライブ!シリーズのイベントで800人程度のキャパシティしかない虹ヶ咲のリリイベについては「まあ当たらないだろうな…」くらいの気持ちで応募していたので、当選のメールが来た時は本当に驚きました。イベントに行くからにはちゃんと予習もしようということで、『CHASE!』以外の楽曲についても今まで以上に聴き込むようにし、万全を期して当日を迎えます。そうしたらみんな本当に良かったです。自分はそれまでにラブライブのイベントには参加したことがなかったので、グループとソロの違いとかはあまりわからなかったですが、ソロで一人一人がパフォーマンスをする姿はとても眩しく、それぞれが個性を活かしてステージを盛り上げるライブのあり方は本当に魅力的だと感じましたし、このイベントを見て「虹ヶ咲のことをこれからも応援していきたい!」という気持ちはより強くなりました。

ただ、その中でも優木せつ菜として一切出し惜しみのない全力のパフォーマンスをする楠木ともりの姿はひときわ自分の脳裏に強く焼きついたのを覚えています。特に、ラスサビでのシャウトは初めて聴いた時、「自分はこれを聴くために今日ここに来たんだ」と心から思いましたし、「優木せつ菜・楠木ともりに懸けたい」という気持ちにさせられました。今思えば、この時点でせつ菜・ともりる推しという自分のスタンスが固まったように感じます。

 

ヘッドライナーとして最高の景色を見せてくれた1stライブ

2019年12月14日・15日に東京・武蔵野の森総合スポーツプラザにて行われた虹ヶ咲の1stライブ。そこで投票の結果によりヘッドライナーという役割を優木せつ菜とそれを演じる楠木ともりが担うことになります。虹ヶ咲としては最初のナンバリングライブであり、初めて「アリーナクラス」の会場で行われ、時期としてもスクスタが9月にリリースされてからのライブということできわめて重要なライブとなった1stライブにおけるヘッドライナーなわけですから、想像を絶するような重圧を背負っていたと思います。しかし、彼女がそこで見せたパフォーマンスは「本気系スクールアイドルの優木せつ菜」そのものであり、3月のリリイベ(校内マッチングフェスティバル)の時からさらにパワーアップした歌声と想いのこもったシャウト、それから『MELODY』で作り上げる「大好き」に溢れた世界観、そしてそれらの楽曲に込められた思いをどこまでもまっすぐに伝えたMC、ヘッドライナーとしてのせつ菜とともりるが1stライブのあの空間に残したものは言葉では言い表せないくらい大きなものだったと言えるでしょう。

そして約1ヶ月後のラブライブ!フェスではさいたまスーパーアリーナに集まったラブライブ!シリーズのファンおよそ3万人を前に『CHASE!』を披露し、文字通り会場を熱狂に包みます。ラブライブ!フェスに関して言えば決して当時の虹ヶ咲を目当てにしていたオタクは多いとはいえず、バリバリの現役グループとしてドームクラスの公演を重ねていたAqoursや約4年ぶりの復活で数々の伝説を残してきたμ'sを見に来た人たちが大半だったわけで、その中でも『CHASE!』一曲で会場の雰囲気を変えてしまった楠木ともりがいかに凄い存在であるかということです。

 

コロナ禍でもがき続ける虹ヶ咲と楠木ともり

2020年の春頃になると、皆さんご存知の通り世の中はコロナによる自粛ムード一色となってしまいます。当然ライブの開催なんてもってのほかで、一時期は生放送やラジオの収録、アフレコなんかもストップしてしまう事態となってしまいました。虹ヶ咲の活動に関しても当然コロナの影響は大きく、2ndライブは無観客での開催となります。2ndライブは「無観客ライブの難しさ」のようなものを強く感じるライブ内容となっていましたが、個人的な印象としてともりるに関しては良い意味で力の抜き方を覚えたようにも見え、厳しい状況の中でも前を向き続けていたように感じます。ともりるは2ndの無観客開催が決まった時にも「新しい試み」としてポジティブな発信をしていたのが印象的で、コロナによる有観客ライブの相次ぐ中止で悶々としていた自分にとってもそれがすごく救いになったのを覚えています。

そしてこの時期の虹ヶ咲の大きな出来事といえばやはり2020年10月からのTVアニメの放送でしょう。一時期はコロナの影響でアフレコやアニメの制作が止まっていた時期もあり、しばらく放送時期等の情報も出ていなかったことから「果たしていつになるんだろう」と思っていた虹ヶ咲のアニメ放送でしたが、9月の2ndライブにおいて10月から放送であることが明かされ、そこからの3ヶ月間は毎週本当に楽しく過ごすことができました。

そして虹ヶ咲における新たな試みとしては2021年3月に行われた「校内シャッフルフェスティバル」も象徴的と言えそうです。1stアルバムのソロ曲*3を他のメンバーが歌うという試みは、各メンバーへの解釈を深めるという意味でもとても有意義なものになっていたと思います。その中で楠木ともりは栞子のソロ曲『決意の光』を披露。せつ菜の曲とは打って変わって「和」のテイストを感じさせる楽曲でしたが、せつ菜らしい熱さを前面に出す歌い方で、彼女自身のさらなる可能性を感じました。この時期は虹ヶ咲としても、優木せつ菜や楠木ともりとしても新たな試みが続く時期で1stの頃とは違ったワクワク感に溢れていたのを覚えています。

 

パフォーマンス制限と楠木ともりが優木せつ菜でいることの意味

コロナ禍という大きな困難がありながらも、虹ヶ咲としても優木せつ菜としても確実に前へと進み続けていた2021年の4月、突然のリリースで界隈に激震が走ります。それは楠木ともりが生来の性質により激しい運動をすると関節に痛みを生じることから、パフォーマンスに制限がかかるというものです。つまり、それは楠木ともりが優木せつ菜役として見せていた「全力パフォーマンス」に制限がかかるということであり、一人のファンである自分にとっても、そして何より彼女自身にとっても辛い話だったということは想像に難くありません。3rdライブにおいては一部トロッコ曲披露の際にステージの裏に下がる以外は普通にパフォーマンスできていたため当時の自分は「過度に心配することでもないのかな」と思ってしまったのですが、9月頃にはより明確に「激しい動きを伴うダンス等は控える」とのリリースがあり、"普通にパフォーマンス"が難しい状態であることが知らされます。10月のA・ZU・NAのファンミでは激しい動きを伴うダンスがともりるの動きから無くなっており、さらに年末のカウントダウンライブや2022年2月の4thライブにおいてはごく限られた時間のみでのパフォーマンスとなり、1stライブの頃はあんなに楽しかった虹ヶ咲のライブをどこか素直に楽しめない自分がいることに気づいてとても悔しくて嫌な気持ちになっていました。

4thライブに関しては全員曲はもちろん、A・ZU・NA曲でもともりるがステージ上に出ることはなく、「それでもスカーレット色のブレードを振ってくれた人がいた」ということを彼女のMCでは触れていましたが、正直自分にはそれはできませんでした。今思えば自分の弱さでしかないと思うのですが、4thに参加していた時は「せつ菜・ともりる推し」としてあのライブを見るのが辛く、ソロ曲の『ヤダ!』の時以外はブレードもスカーレット以外の色を振り続けていましたし、着ていたTシャツもせつ菜ではなくしずくのイラストが描かれたものにしていました(懺悔)。ここまで書いておいて本当に身勝手なのですが、それでもやはり「せつ菜はともりるにしかできない」と考えていましたし、なんとか続けられる方法を探してほしいと願いました。個人的にそう思っていたのは「全力でパフォーマンスする」というのもそうですが、楠木ともりの考え方や生き方のような部分がどこか優木せつ菜に通じるところがあると感じられ、そんなともりるが演じるからこそ優木せつ菜は「生きたキャラクター」でいてくれると思っていたからで、それは決してその時点でのともりるがステージ上で全力のパフォーマンスをできなかったとしても、積み重ねてきた部分が証明しているという考えでした。

 

「できること」と「できないこと」と本人の決断

そんな状態で、虹ヶ咲と楠木ともりに関して悶々とした日々を過ごしながら迎えた5thライブ。激しい動きを伴うダンスはできないため、アニメーションと同じ動きではないものの、一部の曲を除いてずっとステージ上でパフォーマンスし続けるともりるの姿がそこにはありました。正直4thライブでの状態を見て、5thでも「いない」ステージを覚悟していたため、「いる」ステージがあまりにも眩しくて、眩しくて、ずっと「この光景が見たかったんだよ」と思いながら全力でライブを楽しむことができました。5thライブでのともりるはまさしく「できること」はたとえ自分が完全に納得できるあり方じゃなくてもやるということを実践してきており、個人的にそのことがすごく嬉しいと感じました。そして、「これからもこういう形でいいから続けてほしいな」とより一層思えるライブとなりました。ただ、だからこそ僕はともりる推しとして彼女のことを100%理解できているわけじゃないというのを改めて痛感させられることにもなります。

2022年11月1日、ついに「その日」がやってきてしまいました。今にして思えばこういう決断になったのも前向きに捉えられるところが大きいです。まずはこれが「楠木ともり自身の決断であるということ」、そして今回はあまり詳述はしませんが「すごく良い引き継ぎ相手がいてくれたこと」です。特に前者に関しては、ラブライブ!の運営側が「踊れない楠木ともり」を切ったわけではないということで、結果的に「こういう決断なのも受け入れるしかない」と思えた1つのポイントと言えます。彼女自身がそのような決断に至った理由として、本人よりこのようなコメントが出されています。

"楽屋モニターで見たステージに立つみんながあまりに眩しくて可愛くてかっこよくて。

こんな姿をずっと見たいな、見てほしいなって思ったのがひとつの決定打でした。"

5thライブで今の彼女にできる最大限を見せてくれたことで、一方で「できないこと」も浮かび上がってきてしまった側面は間違いなくあったと思います。僕はそれでも楠木ともりが優木せつ菜でい続けてほしいと思ってしまったのですが、誰よりもせつ菜と向き合いせつ菜のことを大切に思うともりるだからこそ、自分の「できないこと」でせつ菜の「全力」を表現できないところにどうしても納得がいかなかったのではないでしょうか。そして、僕自身せつ菜とともりるの「全力パフォーマンス」に強く心を打たれた人間でもあるので、やはりともりるのこの決断については受け入れるしかないと感じています。

 

これからの優木せつ菜、これからの虹ヶ咲、これからの楠木ともり

そして僕は今回の記事の序盤でも言いましたが、優木せつ菜を演じる楠木ともりの存在があったからこそ虹ヶ咲やラブライブ!シリーズ全体に興味を持つことができたので、そこから積み重ねてきた「大好き」という気持ちを今後も大切にしていくことが、このような決断をしたともりるに向けてのファンとしてのできることなのかなと思いますし、それはこの先林鼓子が演じることになる優木せつ菜に対しても同じだと感じます。ここで宣言したいのは、僕自身はこれからも虹ヶ咲のオタクであり優木せつ菜のオタクであるということです。たしかに優木せつ菜に対しては「楠木ともりが演じているから」という見方をしていたのは否定しません。ただし、これからは「楠木ともりが演じていたから」、そして「林鼓子が演じていく優木せつ菜」のことをさらに好きになっていけたら個人的にも嬉しいですし、ともりる推しとしても胸を張れる気がします。

また、楠木ともり自身に関しても、優木せつ菜役としての活動は終えますが、声優・歌手としての活動はむしろまだまだこれからと言えますし、今後いろんなところで活躍を見られる存在になっていくことでしょう。ともりるのこの決断は「せつ菜にとってより良い決断」として彼女自身も決めた部分が大きいとは思うのですが、それがゆくゆくは彼女自身にも良い形で跳ね返ることになればともりる推しとしてもせつ菜推しとしてもこれほどに良いことはないと思っています。2023年3月31日から2023年4月1日へのそれぞれ踏み出した「一歩」が後で振り返った時に「良い一歩だった」と確信を持って言える日が来るまで、虹ヶ咲のこともせつ菜のこともともりるのことも応援し続けます。

 

最後に、これだけは伝えさせてください。

楠木ともりさん、今までせつ菜との二人三脚でいろんな最高の景色を見せてくれて本当にありがとうございます。あなたがずっと大切にされてきた「大好き」という気持ちを今度は林鼓子さん演じるせつ菜に向けても伝えていけたらと思っています。そして、楠木さん自身についても、自分なりの「大好き」の思いを持ちながら今後の活動を応援していけたらと思っているのでこれからもよろしくお願いします。せつ菜とともりるの未来がきっと明るいものになることを信じて・・

*1:厳密に言うと2期放送直前にアベマか何かでやっていたサンシャイン1期の一挙放送

*2:それよりも前だと東方Projectにどっぷり浸かっていた時期もあったがここでは割愛

*3:栞子に関しては3rdアルバム収録の「決意の光」

Liella!メンバーについてじっくり考えたい「平安名すみれ・嵐千砂都・葉月恋」編

みなさん、こんにちは。

Liella!の3rdライブツアーも3/4,5のベルーナドーム公演で無事に千秋楽を迎え、1月から続いていた「ほぼ毎週ライブに行く」という状態がようやく落ち着いたので(まだ3/18のQU4RTZがありますが)、色々振り返るにはちょうどいいタイミングに入ってきました。

というわけで今回は『Liella!メンバーについてじっくり考えたい』シリーズの第2弾です。前回の記事はこちら↓

Liella!メンバーについてじっくり考えたい「澁谷かのん・唐可可」編 - よしのきららのブログ

 

第2弾となる今回は平安名すみれ・嵐千砂都・葉月恋編です。

 

目次のようなもの

・澁谷かのん〜「才能」「挫折」にフォーカスした人物像〜

・唐可可〜可可にとってのLiella!〜

 

↓↓↓今回はここから

・平安名すみれ〜"グソクムシ"が主役に変わるまでの軌跡〜

・嵐千砂都〜対人関係の独特なバランス感覚〜

・葉月恋〜信念を曲げない強さと純粋さ〜

↑↑↑今回はここまで

 

・桜小路きな子〜Liella!にきな子がいることの意味〜

・米女メイ〜"ファン"だったからこそのスタンス〜

・若菜四季〜四季の秘めたるポテンシャル〜

・鬼塚夏美〜人間としての夏美の強さ〜

 

 

  • 平安名すみれ〜"グソクムシ"が主役に変わるまでの軌跡〜

"クーカー"に次ぐLiella!の3人目のメンバーであり、ジョーカー的な存在としてLiella!の新たな魅力を引き出している平安名すみれ。彼女は幼い頃からショウビズの世界で活動を続けており、加入当初から高い実力を持った存在として描かれています。一方で3人体制となったLiella!でセンターを決めようと学内で投票を行った際にはまさかの0票と、すみれに関してはかのんのような「華」(これも一種の才能だと思います)のある存在では決してなかったということです。つまり、「確かな実力はあるけどどこか地味でパッとしない」というのがラブライブ!スーパースター!!の物語における平安名すみれの出発点であると言えます。

「主役」を目指して実力をずっと磨いてきたすみれでしたが、一向に自分のところにスポットライトが当たる気配はなく徐々に心が折られていったというのは、かつてのすみれが原宿の街中でただスカウトに声を掛けられるのを待つだけという消極的なやり方でしか何かを掴もうとできていなかったことからもある程度推し量ることができます。正直、1期4話までのすみれに関する個人的な認識としては、「がむしゃらに夢にしがみつこうとする諦めの悪い子」というよりも「内心ではほぼ諦めかけてしまっている夢を惰性で見続けているだけの子」という感じで、だからこそ彼女がLiella!に入り可可やかのんとの関わりの中で変わっていくことに強い意味を見出すことができるとも感じています。

すみれにとっての変化の一番最初のきっかけはやはり澁谷かのんが直々に自らを「スカウト」に来たところでしょう。結局ショウビズの世界にいた時同様スクールアイドルとしても「主役」に選ばれなかった現実に直面して、やっぱり自分には無理だと諦めようとしていたすみれに対して発せられた「奪いに来てよ」というかのんのセリフは、すみれに「諦めるにはまだ早い」と思わせるのに十分なものだったと言えます。ようするに、すみれはかのんからの「スカウト」によって完全に諦めようとしていたところから一歩踏みとどまったということです。ただ、逆にいえば「諦める」という後退をしなかっただけで、かのんのセリフによって明確に前進をしたとまでは言えないというのもここでのポイントになってきます。

「挫折を知る天才」である澁谷かのんは「諦めないこと=後退しないこと」の大切さを説くのは適任といえますが、彼女の言葉によって前進できるかどうかまではその人次第によるところが大きいということです。なぜならかのん自身は才能があるため、「後退さえしなければ前進は割とすぐにできてしまう」という性質を持っているからで、ここは「華」という才能に恵まれなかったすみれとはやや相性が良くないポイントと言えます。つまり、すみれの前進にはかのんによるアプローチではない「あともう一押し」が必要で、それがここから掘り下げていく内容になります。

1期4話の最後でスクールアイドル部に加入したすみれにとっての初ステージは6話での『常夏☆サンシャイン』であり、この曲は千砂都の加入エピソードに連なることからかのんと千砂都の2名に主にスポットライトが当たる構成の楽曲になっています。次の8話での『Wish Song』は恋の加入に連なる楽曲としてかのんと恋がメインの構成となっており、いずれの曲にしてもすみれの役割はメイン2人を歌とダンスで支える「名脇役」のようなポジションだと考えられます。実際、ライブでの『常夏』の曲中にある、サニパの振り付けを意識したと思われる千砂都(岬なこ)とすみれ(ペイトン尚未)による足をくぐらせる振り付けは、すみれのダンス技術と適応能力の高さを感じさせるものですが、Liella!加入当初のすみれの役割はこうした「主役(ここでの場合は千砂都)を立たせるチームプレイ」であり、本人がなりたいと言っている「主役」そのものではありませんでした。そうした中ですみれが元来培ってきた「適応能力の高さ」「できることの種類の多さ」にスポットライトが当たりそうな流れがやってきます。それが1期10話の『ノンフィクション!!』に連なっていくエピソードになります。

それまでのLiella!においてのすみれの活動方針は「今まで培ってきたことを活かしながら自分にできることをする」「いつかは主役・センターになることを諦めないでいる」というもので、原宿でスカウト待ちをしていただけの頃から「スクールアイドル活動をする」という具体的な行動に出た点では一歩前進していたものの、どこか「今のままでも居場所があるならそれでいい」というような考えになっていた部分があったのだと思います。そうした中で突如として現れた「センターになれるチャンス」が1期10話での「ラップを取り入れた楽曲にする」というラブライブの予選のテーマであり、思ってもみなかったチャンスに重責を感じてしまい、尻込みをするすみれの様子が描かれていたわけです。結局すみれは「主役になりたい」といつ夢を諦めないようにはなったものの、実際に主役になるための覚悟まではできておらず、そこまで変われていなかったということになります。

ここまで書けばこの後僕が何を言いたいかわかる人も多いとは思いますが、そんなすみれを変えたのが唐可可の「誰に対しても真っ直ぐに、嘘をつかずに思いを伝えられる」という性質であり、その忌憚のない言葉であり、スクールアイドルに真剣な姿勢だったということです。他の誰よりもスクールアイドルやラブライブに真剣で、決して嘘はつかずに良いところも悪いところもはっきり伝える可可が「センターにはすみれが相応しい」と言ったことの意味は、すみれにとってあまりにも大きすぎるものだったと思います。可可やかのんと出会うよりもずっと前から主役に憧れて、主役になるための努力を積み重ねてきたすみれにとって「センターを務めること」は非常に重い意味を持っていることは容易に想像できます。そしてそんな大役に同情や消去法で選ばれたくはなかったという一種の「わがまま」な気持ちも見せていたすみれに覚悟を決めさせられるのは、同情や消去法でセンターを選ぶということを絶対にしない可可だけだったと言えるでしょう。

こうして"グソクムシ"(=名脇役、縁の下の力持ち的なポジション)から主役へと進歩を遂げたすみれは、可可への感情の矢印を大きくしていくことになります。1期10話で、可可がスクールアイドルとして結果を残せなければ帰国しなければいけないという事情を抱えていることを知り、「自分を主役へと変えてくれた可可を帰国させるわけにはいかない」と思うようになったすみれは2期の中では誰よりも結果にこだわっていた(焦っていた)ように見えました。そのことの表れなのかはわかりませんが、2期に入ってのすみれは「1人だけ違う方向を向いている」「1人だけ違う場所(ex.机を挟んだ反対側)にいる」といったシーンが目立つようになります。これは正直自分でも深読みな気もしますが、『Go!! リスタート』が披露され終わって6人で肩を寄せ合うシーンですみれ1人だけが笑顔になっていなかったところなんかは印象的です。一方の可可は「スクールアイドル活動が辛いものではあってはならない」という思いが強く、2期を通してLiella!全体としてもそちらの方向性で進んでいくことになるため、すみれのポジションがどこか異質なように感じられるというのはあったかもしれません。可可が2期になってからも(1期の時以上に)すみれに対して辛辣な態度が目立つようになったのは、2人のスクールアイドル活動へのスタンス、もっと言えば「スクールアイドル観」のようなもののズレが大きくなっていたことの表れと考えれば個人的には納得がいきましたし、2期9話はそのズレを敢えて一度決定的なものにした上で、その後ろ側にある「本音」の部分をぶつけ合うエピソードとして東京大会前のあのタイミングでやることに意味を持たせていたと思います。すみれにとって可可は自分を"グソクムシ"からずっとなりたかった主役へと変えてくれた最大の恩人であり、可可から見たすみれはスクールアイドルをやりたかった自分にとって足りなかった部分をその適応力の高さで色々と補ってくれたという意味でやはり必要な存在だというのが2期まで観た上での個人的なクゥすみ解釈です。

 

 

  • 嵐千砂都〜対人関係の独特なバランス感覚〜

Liella!のダンスリーダーであり、2期からはスクールアイドル部の部長も務めている嵐千砂都。ダンスの実力は非常に高く、1期6話ではダンス大会で優勝*1も果たすなど物語の序盤の時点でかなり秀でた存在として描かれています。そんな千砂都ですが、幼い頃は気も弱くいじめられっ子だったという過去もあり、その時かのんに救われたことがきっかけでかのんの隣に並び立てる存在になりたいと思ったことが、千砂都にとってのすべての始まりであると言えます。そのため、千砂都の考えの中心にあるのは澁谷かのんと自分との関係性の中で、お互いがどういうポジションにいるのか、ということだと感じます。千砂都の行動を読み込んでいく上ではこの前提を抑えておく必要があります。

千砂都に関しては、個人的にスーパースターの登場人物の中でも異質というか、かなり理解するのが難しいタイプの人間だと思っているのですが、一方で決して支離滅裂だったり人格的に破綻していたりということは決してなく、きちんと理屈で動いている人間であるという話をここではしていくつもりです。まず、はじめに千砂都はかのんに対して「歌えるようになること」を決して強要はしなかったという点です。人前で歌を歌えなくなっていたかのんに対して歌を歌わせるように動いたのは前回のかのん編・可可編でも述べたように可可であり、可可自身もあくまで「かのんと歌うことは自分にとっての夢」というスタンスでした。千砂都は幼馴染としてかのんとの交流は続けており、「歌えないかのんには価値がない」というような理想の押し付けはせず、ただ可可とかのんの動向を見守るというポジションにいました。一方で自分自身については異常なほどにストイックであり「ダンスで役に立たなければかのんと隣にいる資格はない」との考えで、大会で優勝できなかった場合は退学して海外に留学しようともしており、千砂都のかのんに対しての感情の重さを窺い知ることができます。ここまで見てきて言えることとしては、千砂都はかのんに対しては押し付けではなく絶大な信頼に基づいてあくまで見守るスタンスを取りながら、自分自身はそのかのんに並び立てるような存在になるべく研鑽を続けているということです。

ようするに千砂都にとってのかのんは「このくらいのポジションまでは到達していくだろう」という非常に大きな信頼と期待があって、その上で自分も同じ高みに登ろうとするのであり、「自分と同じ高みまで登ってこい」というような「自分に厳しく相手にも厳しい」スタンスとは若干異なるのだと感じます。そんな千砂都が、かのんに対して「こうあってほしい」という理想をぶつけたエピソードの1つが1期11話の内容です。千砂都自身が特別に働きかけることなくLiella!として人前で歌えるようになったかのんに対して、「みんながいなくても歌えるようになること」を求めるわけですが、これはLiella!であり続ける以上は「そうする必要のないこと」であり、逆に言えば千砂都がそれを求めない限りかのんがそれをする状況というのが生まれなかった類のものでした。つまり、千砂都から見てかのんは基本的に自力で状況を打開できる人物ではあるものの、置かれている環境的にそれが難しい時は自分が介入するということなんだと解釈できます。あるいは、澁谷かのんという人物は置かれている環境の部分さえクリアしてしまえばあとは自分が想定するくらいの高みにはあっという間に登って行ってしまう人物なんだと千砂都は考えているということなのかもしれません。いずれにしても千砂都はかのんに対して絶大かつ強力な信頼を寄せているということです。

この千砂都の「相手に何かを求めていくというよりは、自分がまず変わってみる」という対人関係の構築スタイルが対Liella!において活かされることとなったエピソードが2期4話における部長への就任です。「自分にはスクールアイドルは向いてないから」と本当はやりたい気持ちに蓋をしてスクールアイドル部への入部を拒んでいたメイを見て、彼女自身や彼女をスクールアイドル部に入部させたいと考えている他のメンバーに直接働きかけるのではなく、まずは自分自身が向いてないと思っていた部長に就任することで、周囲にも考えを波及させていく展開となっています。さらに部長としての嵐千砂都を掘り下げていくと、かのんには出来ないシビアな選択をできるというのも強みだと言えます。かのんに関しては前回のかのんの項でも述べたように「1人も取りこぼしたくない」というところが行動原理としてあり、これは彼女の人間的な魅力の部分に直結している一方で、たとえそれが必要な場面であっても「取捨選択」をできないということになります。そういう意味で千砂都は(部長就任前ですが)新入生の勧誘の問題や実力差の問題などの時に「何を取って、何を取らない(犠牲にする)のか」を踏まえた判断ができる人物として描かれており、かのんではなく千砂都が部長になったことにしっかりと意味を見出すことができます。

Liella!のメンバーの個々に対して、直接「こうしてほしい」「こうあってほしい」ということを伝える場面は僅かであり、基本的には「まず自分はこうだから」というのを示した上で相手に選択肢を与えるような千砂都の動きは、結果的に1年生が自らの意思で2年生に並び立とうとしたり、かのんにとっての「本当の歌」が何なのか気づくきっかけになっていたりと、スーパースターのストーリー展開の中でしっかり意味を持ったものになっていたと感じられます。この千砂都の対人関係における独特なバランス感覚については、ストーリー上で非常に重要なポイントでありながら紐解いていくとかなり複雑に感じられる部分でもあり、スーパースターの作劇の中でも賛否の分かれやすいところなのでしょう。

 

 

  • 葉月恋〜信念を曲げない強さと純粋さ〜

成績優秀で運動神経も良く、生徒会長として新設校である結ヶ丘の生徒をまとめる役割も担うLiella!のエースこと葉月恋。ラブライブ!シリーズではもはやお馴染みの「最初はスクールアイドル活動に反対する生徒会長」のポジションであり、物語の序盤ではかのんや可可に対立する人物として描かれていきます。このポジション自体はお約束であるため、そこに関しては特段何かを言及はしませんが、ただ序盤の恋に関しては「とにかくスクールアイドルだけはやめてほしい」という強烈さがあり*2、「なぜそんなにもスクールアイドルばかりを敵視するのか」「どうやって和解してメンバー入りを果たすのか」注目をして見ていました。

恋に関しては加入が描かれる8話になるまではほとんどまともな掘り下げはされていなかったため、8話でようやく性格や考え方の部分が見えるようになったのですが、まずは何と言っても「思い込みの強さ」がかなり激しい人物であることがわかります。基本的にラブライブ!シリーズは「根っからの悪意を持って行動する人物」は描かないため、恋に関してもかのんや可可に嫌がらせをしてやろうというような悪意に基づく行動でないことは元々ある程度想像できたわけですが、そうした悪意が無くスクールアイドルだけをやたらと敵視する理由づけとしてはこの「思い込みの強さ」というのは妥当なところだと感じます。思い込みが強いだけであるため、その思い込みの内容さえ正してしまえば和解にもそんなに時間がかからないわけで、その点を踏まえると8話の展開も十分納得のいくものでした*3。そして1期において恋の掘り下げが進んだポイントとしてはあの「禁断のセカイ」のシーンがありますが、ここでも理事長からの呼び出しについてサイトを開いてしまった自分への叱責だと思い込んでしまうところが描かれており、ここでLiella!加入後の恋が加入前(8話より前)の恋としっかり地続きであると示していたのは個人的に評価したいポイントでもあります。

結局、1期に関しての恋はこの「思い込みの強さ」が一番大きなポイントとして描かれており、その背景にある真面目さや純粋さを強調するようなシーンが少なかったと感じるのは事実であり*4、先日の3rdライブ千秋楽での青山なぎさのMCはそうした部分も踏まえていたのだと思いました。ただ、葉月恋の真面目さや純粋さというのは1期の頃からずっと描かれた部分でもあり、それが2期においてはポジティブな方向で掘り下げられていったというのもまた事実です。今回はそうした部分についても自分なりに深掘りしていこうと思っています。

まず、恋は物語開始の時点で既に母親を亡くしており、母親の遺した学校でもある結ヶ丘をより良い学校にしたいという強い決意を持った人物として登場してきます。そしてこういう話は本来あまりすべきではないのでしょうが、高校1年生の少女が母親を亡くし、父親もほとんど家にはいないという状態で、母親の遺した学校で生徒会長としての責務を果たそうとする中で、どれだけ正常な判断力を維持できるのかという視点もあります。その中で見れば1期の時点でも恋の行動はそこまでおかしいと言えるものでもなく、致し方ないといえる部分が大半だったのは事実です。恋のスクールアイドルや普通科に対する仕打ちもやられた方はたまったものではなかったでしょうが、それでも「そうしてしまうだけの何か」は恋の中にはありましたし、それは決して「思い込みの強さ」というだけではなく、恋の元来持つ信念の強さや真面目さの表れだったとも取れます。文化祭を音楽科主導でやると言い出したのも、非難を受けるのは覚悟の上でそれでも「学校の状況をなんとか良くしたい」という思いの強さゆえの行動であったことはあえて説明するまでもないと思います。

結局1期の恋というのは、そうした信念の強さや純粋さ、真面目さといった恋元来の人間性が悪い方向性で現れてしまったということでしかなく、それは2期での恋を見て行けば十分に理解できるところでしょう。実際、2期に入り2年生となった恋はLiella!という仲間ができたことで表情もすっかり柔らかくなり、スクールアイドル活動を楽しめている様子が描かれています。その中で、例えば2話では「この学校にスクールアイドルを根付かせたい」と真っ直ぐな思いを伝えるなど、従来の信念の強さも要所要所で覗かせており、存在感を発揮します。また、生徒会長としての責務も依然として全うしており、責任感の強さも垣間見せるなど、人物的な魅力の掘り下げが進みます。このように従来の人間性が良いサイクルで回り始めた時の恋は非の打ち所がない優等生であり、いろんな人から慕われる存在であることがわかります。

一方で今度は逆に欠点がなく親しみを覚えづらいという点が指摘できるようになります*5。特に1年生からすればすみれや可可のような弱みが見えやすい存在の方がとっつきやすく、恋のような存在に対してはどうしても精神的に距離を感じてしまうものなのだと思います。だからこそ7話の「UR 葉月恋」はやはり葉月恋という人物を掘り下げる中での最後のピースとして必要な回だったと思いますし、実際あのエピソードがあったことで特にメイなんかは恋との距離を大幅に縮めることに成功しています。真面目で責任感の強い恋がゲームという趣味を見つけられたという点でも良いエピソードだと感じますし、純粋だからこそゲームを心から楽しめてるのも恋の掘り下げとしては非常に説得力があります。そして何よりあの回の恋は視聴者目線でも「かわいい」ということです。葉月恋の魅力をかなりストレートに描いていますし、それまでの恋に関する描写の積み重ねがあったからこそ、ただ恋がゲーム廃人になっておしまいということではなく、魅力の掘り下げに繋げられている点もアニメのエピソードとして見事です。

*1:2022年5月に刊行されたLiella! SPECIALによると優勝したのは全国大会

*2:歴代の同じようなポジションのメンバーだと、スクールアイドルというよりも「無意味な活動はやめてほしい」というスタンスであることが多く、その中にスクールアイドル活動も含まれているというニュアンスが強かった

*3:今となっては。当時はイマイチ恋の人物像がわからずに展開を唐突だと感じてしまっていた

*4:無かったというわけではないし、当時から恋のそういった魅力について語る声も出ていた

*5:欠点がないという話は1期の頃からしていた

Liella!メンバーについてじっくり考えたい「澁谷かのん・唐可可」編

みなさん、こんにちは。

Liella!3rdライブツアーもいよいよ残すところ3/4,5に行われる埼玉・ベルーナドームでの千秋楽公演のみとなりました。ベルーナドーム公演はLiella!単独ライブとしては初の「声出しあり」でのライブということで*1、現地参加するのが非常に楽しみです。

3rdライブツアーは、純粋な「ライブとしての楽しさ・満足度」においても1stや2ndの頃からパワーアップしたLiella!を感じることができ、公演に参加するごとに「来てよかったな」「楽しかったな」という気持ちになれる素晴らしいツアーです。そんな3rdライブツアーですが、ベースとなるのはやはり『ラブライブ!スーパースター!!TVアニメ2期』で紡がれた物語ということになります。本作に関しては以前ブログでも個人的な感想文を載せたのですが、( ラブライブ!スーパースター‼︎2期を自分なりに噛み砕いていく〜自分にしかできない見方を〜 - よしのきららのブログ )今回はライブを通じてさらに解像度の上がった個々のメンバーについてピックアップしていきながら、同作品(とラブライブ!スーパースター!!というコンテンツ全体)を振り返っていきたいと思います。ここで各CPに関する自分のスタンスなんかも伝えていければ(笑)。

大分長くなるので数回に分けてアップしていきたいと思います。まず第1弾としては澁谷かのん・唐可可編です。

 

目次のようなもの

・澁谷かのん〜「才能」「挫折」にフォーカスした人物像〜

・唐可可〜可可にとってのLiella!〜

↑↑↑今回はここまで

 

・平安名すみれ〜"グソクムシ"が主役に変わるまでの軌跡〜

・嵐千砂都〜対人関係の独特なバランス感覚〜

・葉月恋〜信念を曲げない強さと純粋さ〜

・桜小路きな子〜Liella!にきな子がいることの意味〜

・米女メイ〜"ファン"だったからこそのスタンス〜

・若菜四季〜四季の秘めたるポテンシャル〜

・鬼塚夏美〜人間としての夏美の強さ〜

 

 

  • 澁谷かのん〜「才能」「挫折」にフォーカスした人物像

まずはラブライブ!スーパースター!!の主人公である澁谷かのん。彼女についてまず言えるのは、一貫して「才能のある人物」として描かれているということです。中学時代には屋上の1人で歌っているかのんの周りにギャラリーが集まっている様子が描かれたり、幼年期の頃から歌で周りに期待されていることが窺えたり、かのんの歌声を一瞬だけ聴いた可可が「スバラシイコエノヒト」と言ってスクールアイドルに勧誘するのを決めたりと、澁谷かのんの「歌」に関しては物語開始の時点で非常に魅力的なものとして描かれていました

一方でかのん自身は過去に歌を歌えなくなった経験によって、今でも歌を歌おうとすると声が出なくなるという一瞬の「トラウマ」が発動している状態でした。その「トラウマ」によって結女の音楽科の試験にも落ちており、結果的に普通科で合格して学校には入学するものの、目標ややりたいことを見失った人物として登場するのが1期1話での澁谷かのんです。つまりかのんは一瞬で聴いた人間を魅了できるような素晴らしい歌の才能を持ちながら、過去のトラウマが原因で音楽科の試験に落ちるという挫折を味わっており、この「才能」と「挫折」が鍵となって澁谷かのんに関する描写は展開されていきます

その中で先にも述べた通り唐可可と、嵐千砂都に関してはかのんの「才能」に突き動かされる形でそれぞれの行動を起こしていきます。可可にとっては上海から日本に来て何の後ろ盾もない状態からスクールアイドルを始めようと考えていた時に、文字通り"運命的な出会い"をかのんと果たします。可可から見た時に澁谷かのんという存在はまさに「求めていた人材」そのものであり、この出会いこそがラブライブ!スーパースター!!の物語における全ての出発点となっているわけです。

ようするに(この後の可可の項目でも詳述しますが)、かのんと可可は「出会ったこと」そのものに強力な意味があり、お互いがお互いにとっての「起点」として非常に重要な地位を占めていると言えます。ここでもう1つ、澁谷かのんに関して無視できないポイントとしてあげられるのが「正義感の強さ」です。かのん目線で不当にスクールアイドルの活動を制限しようとしているように見える葉月恋に食ってかかる描写もそうですし、1期から2期までを通して「誰1人として取りこぼさない」という利他心を常に発揮しているところからも、彼女の正義感の強さがわかります。この「才能+正義感に溢れた人格」によって、澁谷かのんは可可、千砂都を始めとする多くの人から慕われていくわけです。

そんなかのんですが、可可に誘われてスクールアイドルを始めてみたのはいいものの、過去のトラウマで歌えないという部分は変わっておらず、可可の前で「弱さ」を見せてきます。可可からして見れば日本に後ろ盾なくやって来た自分にとって「救世主」で「憧れ」の「スバラシイコエノヒト」である澁谷かのんが「自分と同じ1人の高校1年生」として対等な立場に置かれた瞬間であり、自分がかのんと一緒にやりたいのは決してかのんに才能があるからということではなくて、「澁谷かのんの歌」そのものに惹かれたからだとはっきり伝えられるきっかけにもなりました。一方でかのんにとっても、「歌を歌えない自分」でも決して見捨てずに隣にいようとしてくれた可可の思いに触れたことで、「誰かと一緒なら人前でももう一度歌うことができる」という気づきを得ることになります。2人の「出会い」がきっかけとして動き出したストーリーがそれぞれの「想い」を新たにする事でステージ上のパフォーマンスとして成就するというのが1期3話での「クーカー」による『Tiny Stars』の本質であり、特にかのんにとっては再び「歌を歌う」ことへの道を進み始めたきっかけとして極めて重要な意味を持つエピソードだと感じます。

一方でかのんの「挫折」をしたという経験の部分にある意味救われたような形になったのが平安名すみれ、桜小路きな子、鬼塚夏美、そして現時点ではLiella!のメンバーではないもののウィーン・マルガレーテもそのうちの1人に数えることができそうです。この部分はかのんの発する「言葉」の部分に表れています。例えばすみれを3人目のスクールアイドルとして「スカウト」した時の「奪いに来てよ」というセリフは、自分自身の歌を歌えない状態から可可との出会い、関係をきっかけにして再び歌えるようになった経験を経て「もうダメだと挫けそうになっても諦めなければいつかできる日が来る」ということを心から信じるかのんだからこそ「中身のある言葉」として発せられたのだと捉えられます。夏美の勧誘の時にはさらにわかりやすく「私も挫折をしてきた」「音楽科に入る夢を失敗した」ことを語っており、その上で「でもみんなと一緒なら夢を追いかけることができる」と自身のこれまでを振り返りつつ夏美の「何をやってもできない」と感じていた心を動かすことに成功しています。

かのんは先に述べたように歌に関する圧倒的な才能を持ち、人格的にも正義感が強く人望を集めている人物でありながら、同時に挫折経験によって「何者にもなれない」という人にも寄り添える存在としても描かれており、この2つの側面(「才能」と「挫折」)があるからこそラブライブ!スーパースター!!の物語の主人公たり得ているわけです。

 

  • 唐可可〜可可にとってのLiella!〜

続いて単身上海から日本に渡ってきており、Liella!の発起人でもある唐可可。可可にとっての物語が動き出したのは上海で「Sunny Passion」のライブ映像を見かけた時からです。おそらくサニパの活動期間等を考えても日本で言う中学3年の冬あたりの出来事だったと思いますが、そこからわずか数ヶ月後の高校入学時点では日本に移ってきています。つまり彼女は(細かいバックグラウンド次第では違うところも出てくるかもしれませんが)高校入学までの数ヶ月間で

・日常で使えるレベルの日本語の習得

・日本で通う高校の選定、受験、入学の諸手続き

・スクールアイドルに関する知識の習得(大会の存在や時期等の把握)

・スクールアイドル活動に必要な服飾、舞台設営等の技能習得

・スクールアイドルとして披露する楽曲の作詞

といったものを既に行っており、彼女の好きな言葉でもある「思い立ったが吉日」をまさしく体現したような行動力を見せつけてきています。

しかし、やはりわずか数ヶ月の間ですので「一緒にスクールアイドル活動をしていく仲間」の"当て"まではつけられていなかったところに、突如として現れたのが「スバラシイコエノヒト」こと澁谷かのんだったわけです。さきほどかのんの項でも述べましたが、この可可とかのんの出会いこそがラブライブ!スーパースター!!の物語が動き出すきっかけであり、可可自身にとっても後ろ盾のない日本という土地でスクールアイドルを始めるための足がかりとして澁谷かのんの存在はこの上なく大きかったと言えます。

可可にとっては前述した通りSunny Passionのライブ映像を見たことがスクールアイドルを始めようと思ったきっかけになるわけですが、かのんの歌声を聴いて「この人(かのん)と一緒にスクールアイドルをしたい」というイメージが明確になり、そこから本格的にスクールアイドルとしての行動を開始するという流れになっています。スーパースターではなく虹ヶ咲の方のセリフにはなってしまいますが「やりたいと思った時から、きっともう始まってるんだと思う」とあるように、可可にとっては「かのんとスクールアイドルをしたい」と思ったことがスタート地点であり、スクールアイドルとしての始まりだったと言えるわけです。そして1期3話では「クーカー」として『Tiny Stars』を披露するわけですが、この時点で可可の「かのんと一緒にスクールアイドルをしたい」という夢は叶うことになります。つまり、可可にとってのかのんは「日本に来て夢に向かって進むためのきっかけをもたらしてくれた存在」であるのと同時に「日本に来て最初の一緒に夢を叶えた存在」でもあったということです。

この「最初」というポジションはその後に人間関係にどんな変化が生じたとしても絶対に変わらない部分であり、そのことこそが「クーカー」の本質なのだと個人的には感じます。「クーカー」がなければLiella!に関するすべてのことが成り立たなくなると言えるくらい、物語上できわめて重要な存在であり、それは1期、2期と物語が進んでいく中でも決して変わっていないということを改めて強調しておきます。

可可はその行動力の高さでかのんを誘いスクールアイドルとしての一歩を踏み出したわけですが、その可可にとって青天の霹靂とでもいうような出来事が発生します。それが平安名すみれの加入です。Sunny Passionのライブ映像を見たことでスクールアイドルと出会い、かのんとともに「クーカー」としてのステージを成功させた可可にとって、スクールアイドルというのは常に素晴らしいものであり、上海から日本にやって来て過ごす中でそのことはずっとブレずにあったんだと思います。最初は即戦力としてすみれを暖かく迎え入れますが、その後にすみれの加入の意図を聞いて、彼女がスクールアイドルを低く見積もっていることを知ると態度が一変します。可可にとってはわざわざ上海から日本に来てまで始めようとしたくらいその魅力に取り憑かれていて、さらには「クーカー」として素晴らしい経験もできた、そんなスクールアイドルを低く見積もり自分が目立つための道具として利用しようと考えていたすみれに対する印象が悪くなるのは当然といえば当然です。

それ以降、すみれに対しては辛辣な態度が目立つようになるのは周知の事実ですが、一方ですみれの能力に関してはちゃんと認めているというのが1期10話のエピソードでわかるわけです。可可自身、元々体力ゼロで運動がまったくできないという状態でスクールアイドルを始めようとしていたので、基礎的な体力や技術の備わっているすみれは「自分には持っていないものを持っている相手」だと言えます。当初「即戦力」だったすみれを歓迎していたことからもわかるように自身がスクールアイドルをやっていく上でそういった仲間の存在が必要なことはおそらく理解できており、何より自分自身にとってもスクールアイドルとして結果を残さないといけない都合があったことから、可可はすみれに「自分自身やLiella!の足りないピースを埋めて欲しい」と考えていたような気がします。これはかなり憶測が過ぎる部分もありますが、結局10話ですみれがセンターになることにこだわったのもその実力は認めていたことの証左ですし、可可にとってのすみれは少なくとも「Liella!に必要な存在」として認識しているだろうことは容易に想像できます。

そして、これは可可自身が決してダンスや体力といったスペックの面で恵まれているわけではないからこそな気もしますが、すみれの実力をLiella!(1期生)の中で一番高く評価しているのが可可で、これはすみれにとってはかなり大きかったということです。「モブとして使える都合のいい存在」ではなくちゃんと「平安名すみれ」として認めて欲しいという思いを持っていたすみれにとって、自分の能力をはっきりと認めてセンターが相応しいと言ってくれた可可の存在は間違いなく特別です(この辺りについてはすみれの項で詳述したい)。それで結果的に、1期の10話の『ノンフィクション!!』を経てから2期9話に至るまでは「可可を特別だと感じるすみれ」と「すみれに自身の帰国問題について気を使って欲しくない可可」との間ですれ違う状況が続くことになるわけですが、可可は何気なく(素直に)すみれの実力を認めたに過ぎないつもりでも、それがすみれにとっては特別な意味を持ってしまった+可可目線ですみれは唯一自身の帰国問題を把握している存在であるという状態ゆえに2期に入ってからもずっと可可のすみれへの態度は辛辣だったと見ることができます。

結局ここまで紐解いて来て見えてくるのは、可可は元々「スクールアイドルをやりたい」という思いから日本に来てLiella!を結成した*2わけですが、可可にとってのLiella!は「自分がスクールアイドル活動をするための手段」などでは決してなくて、「かのん・すみれ・千砂都・恋、2期ではさらにきな子・メイ・四季・夏美という仲間と一緒にスクールアイドルとしての日々を過ごせる場所」として大切なものになっていったということです。2期9話で1年生に実力差のことを伝えるかどうか2年生で話し合った際、「1年生が辛くなる」という理由で「話さない方がいい」と言っていたのも、可可にとっては自身の帰国問題以上に今自分がいるLiella!という「場所」が壊れてしまうのを恐れたからと考えれば、個人的にかなり納得のいく部分でもあります。

*1:単独ライブ以外では2/12に開催の超次元音楽祭Day2@ぴあアリーナMMにて声出しありでのライブに出演済み

*2:厳密にはLiella!の"前身"とも言うべきクーカーを結成し、Liella!として活動するための足がかりを作った

2022年にリリースされたラブライブ!楽曲の中から10選を決める

いよいよ2022年も終わりを迎えようとしています。今年は新型コロナウイルスとの終わらない戦いやロシアによるウクライナ侵攻など、世界的にも激動の一年でした。そんな中、ラブライブ!シリーズではシリーズ史上初めて1年の間で2つのTVアニメシリーズが放送されたり、Aqoursはドームライブツアーの開催、虹ヶ咲は2つのナンバリングライブ、 Liella!に至っては3つのナンバリングライブが開催されたり*1、ミュージカルやバーチャルスクールアイドルといった新たな展開が動き出したりと、こちらも激動の一年だったと言えます。そうして展開が活発になると楽曲数もかなりのペースで増えていくわけですが、今年では88曲もの楽曲が新たに追加されました(自分調べ)。そこで今回は昨年に引き続き、個人的に気に入った・良いと思った・ぶっ刺さった楽曲を10選という形で発表していきたいと思います。

昨年の記事はこちらより 2021年にリリースされたラブライブ!楽曲の中から10選を決める - よしのきららのブログ

 

「2022年にリリースされたラブライブ!楽曲」の定義としては、

・2022年に発売されたCDに収録された新曲

・2022年に発売されたアニメのBlu-rayの特典として収録された新曲

・2022年に最終巻が発売されたアニメのBlu-rayの全巻購入特典として収録された新曲

・その他で2022年内において何らかの方法で入手可能となったCDに収録された新曲

となります。

2022年3月発売のLiella!の1stアルバムには『START!! True dreams』や『始まりは君の空』などの曲も収録されていますが、これらは新曲ではないため除外されます。

Sunny Passionの楽曲『HOT PASSION!!』は2021年放送の『ラブライブ!スーパースター‼︎』に部分的に登場していますが、CDとして発売されたのは2022年2月のため今回の記事の対象です。

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のシングル『永遠の一瞬』の収録曲である『Hurray Hurray(12人ver.)』は2021年発売のBlu-rayの特典曲として登場しているため除外されます。『TOKIMEKI Runners(12人ver.)』や『Love U my friends(12人ver.)』に関しても同様の措置とします。

 

以上の点を踏まえた上で、10選を決めていこうと思います。今回は10位から1位までのランキング形式にしています。

 

筆者が独断と偏見で決める2022年のラブライブ!楽曲10選

 

それでは、10位から発表していきます…!

 

 

 

  • 第10位

"Oh my! 星空のstage light

このpassionはずっと揺るぎない"

 

 『Till Sunrise

歌:Sunny Passion

Sunny Passionの持ち曲2曲のうち、『HOT PASSION!!』が彼女たちにとっての"名刺代わり"の曲だとすれば、こちらは「ラブライブ優勝グループ」としての彼女たちの現在地を示したような曲。ラップパートの格好良さに加えて、メロディからはどこか切なげな部分も感じられ、「神津島のためにスクールアイドルとして活躍したい」と考える2人の思いがダイレクトに伝わってきます。「月夜」「海辺」「星空」「水平線」といった神津島の自然を想起させるワードが多く使われてるのもポイントと言えますね。

 

 

 

 

  • 第9位

"新人スクールアイドルの

大きな声で歩夢だぴょん!"

 

繚乱!ビクトリーロード

歌:虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

これぞ虹ヶ咲といった感じの、ライブでやれば必ず盛り上がるいわゆる「自己紹介ソング」。曲がリリースされた時点でライブ披露に対する期待度はかなり大きかったと思いますが、5thではまさかの特攻服*2による登場とド派手な演出でその期待をさらに飛び越えてきました。この曲の見事な点は、「12人揃わなくても披露がしやすい」という点。フェスイベント出演時における虹ヶ咲の定番曲になり得る楽曲だと思います。ちなみに個人的にはエマの「海を渡ってスイスイスイ」のところが好き。

 

 

 

 

  • 第8位

"なにも見えない夜が来ても

勇気だして笑ってみよう"

 

Sing!Shine!Smile!

歌:Liella!

ラブライブ!スーパースター!! TVアニメ2期』より第10話でラブライブ東京大会の披露曲として登場したこちらの曲。個人的にスーパースターの2期が10話までで「ラブライブで勝つこと」へのアンサーを示す話になっていると捉えており、この曲が1つの「集大成」であると感じています。直前に披露されるウィーン・マルガレーテの『エーデルシュタイン』と比較して「みんなで」「楽しく」ということが曲調からも強く意識されていて、実際に3rdライブで披露されたのを聴いていてもステージ上の9人と一体となれるような暖かい印象を受けました。サビ部分のダンスが9人横並びで揃ってるところはライブで見ると壮観です。

 

 

 

 

  • 第7位

"めくるめく表情くるりと感情チラリ

まるでピンポンボール"

 

Look at me now

歌:R3BIRTH

虹ヶ咲のアニメ2期Blu-rayの4巻の特典として収録された曲。「全部の曲が強い」とも言われるR3BIRTHですが、この曲もその例に漏れていません。『MONSTER GIRLS』や『Vroom Vroom 』はどちらかというと重低音を響かせる激しめの曲調ですが、こちらは軽快なテンポで心地よいメロディが流れてくるオシャレ系の曲という感じです。R3BIRTHの魅力の1つはスクールアイドルとしては「規格外」なところだと思うのですが、良い意味で普通のスクールアイドルらしくない大人な雰囲気がある曲で、聴くたびにクセになっていってしまいます。

 

 

 

 

  • 第6位

"はじまりの風光る

瞬く明日へと"

 

Future Parade

歌:虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 TVアニメ2期』の第13話挿入歌で、アニガサキの劇中においては初めて12人で歌唱された曲。1期で同じポジションに相当する楽曲『夢がここからはじまるよ』と比較して初見(初聴?)の印象では正直そこまで刺さっていなかったのですが、5thライブで実際に披露されたのを見て自分の中での評価が大きく変わった曲でもありました。アニメの展開も良いのですが、スクスタ・アニメ双方の展開が「12人のスクールアイドルとあなた/侑のいる同好会」としてようやく足並みが揃ったところで出てくることもあって、やはり自分の中では特別な感じがします。特に5thライブの最終日(武蔵野の森のDay2公演)ではダブルアンコールにて最後に披露されており、結果的にこれが今の12人で披露された最後の曲ということになると思うので*3、より一層思い入れは強いです。

 

 

 

 

  • 第5位

"毎日がパラダイス 絶対的なスマイル

何百回転したって楽しんです"

 

POP TALKING

歌:Liella!

昨年の10選記事において『Day1』をLiella!の切り札的な楽曲として紹介しましたが、その『Day1』が5人版Liella!の切り札であるとすればこちらは9人版Liella!の切り札と言えるような曲。がっつりラップパートが入っている点は2曲とも共通していますが、『Day1』がカッコいい系のラップだったのに対してこちらはコミカルな雰囲気のラップパートになっています。個人的にLiella!は2期生の4人が加わったことで、洗練された5人のパフォーマンスからわちゃわちゃしていて楽しげな雰囲気でのパフォーマンスへと変わっていった印象ですが、この曲はその「わちゃわちゃ」感を良く表していると思っています。

 

 

 

 

  • 第4位

"ゲーム継続

あとちょっとで何かつかめそう"

 

迷冥探偵ヨハネ

歌:津島善子(小林愛香)

6月のAqours6thライブ東京ドーム公演の2日目で完全初披露されたヨハネの3曲目*4のソロ曲。CD音源で聴いてももちろん良いのですが、なにせこの曲を初めて聴くこととなったのが東京ドームで実際にライブ披露されているものであったため、初見のインパクトの大きさが段違いでした*5。元々安定してハイレベルなパフォーマンス能力をライブで発揮する小林愛香さんですが、この東京ドーム公演は特に凄まじく、その状態で初めて披露されたこちらの楽曲に関してはあの時ライブを見ていた全てのオタクにぶっ刺さるくらいのパワーを持っていたと言っても過言ではないと思います。

 

 

 

 

  • 第3位

"ずっと終わらないね 夢を教えてほしいよ

いま目の前にひろがる 未来へとこの気持ち連れていこう"

 

ニゾン

歌:Liella!

1stアルバム収録曲であり、5人体制のLiella!において最後にリリースされている曲。1stアルバムを引っ提げての3都市6公演に渡る2ndライブにおいては各公演の「トリ」を飾る楽曲にもなっていました。そういった楽曲の立ち位置であることからも、「区切り」を意識したような曲という印象も受けます。イントロが時計の秒針の音で始まり、「ずっと終わらないで 時がとまればいいのに」という歌詞もあって、全体的に「何かが終わり、新しい何かが始まる」ということを歌ったような曲ですが、これは5人のLiella!から9人のLiella!へと切り替わる時期だからこそより響くところがあった気がします。

 

 

 

 

  • 第2位

"Let's go! Step into the new world

偽りのない姿見せて"

 

Eternal Light

歌:DiverDiva

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 TVアニメ2期』の第4話挿入歌。DiverDivaのカッコいい部分が余すところなく発揮されている曲だと感じます。特にライブで(しかも音響の良いガーデンシアターで)聴くとマジで強いとしか言いようがないです。愛役の村上奈津実さんが高速ラップのパートを平然と披露して見せるのも凄いですし、果林役の久保田未夢さんもキレのあるダンスやステージ上の振る舞いがとても良くて、全体的に満足度の高かった5thライブの中でも特に印象に残ってる曲だったりします。DiverDivaに関してはキャストが2人ともパフォーマンスの鬼みたいな人なので、フェス系のイベントにもどんどん出演していってほしいです。

 

 

 

 

  • 第1位

"Say イエイエイエイエ〜!ファンキーココナッツ

僕らジューシー 真夏の申し子さ"

 

ビタミンSUMMER!

歌:Liella!

ラブライブ!スーパースター!! TVアニメ2期』より第6話の挿入歌で、9人のLiella!としては劇中で初めて披露された曲。ラブライブのアニメ挿入歌としては歴代トップクラスで意味不明な歌詞になっていますが、こういった楽曲があってこそLiella!が9人になった意味を個人的には感じます。この曲に限らず、Liella!の楽曲はいわゆる「文脈」の部分を他のシリーズよりも抑えめにして、その分自由度を高めているような印象もありますが、そんなカオスでもライブになればちゃんと流れに沿ってパフォーマンスされるので見ていて安心感があります。自由度を上げられるからこそ、こういった「楽しい」に特化した楽曲が出てくるというのはLiella!にとっての明確な強みでもあり、個人的にLiella!のライブをより多くの人に自信を持って「見てほしい」と言えるポイントでもあります。

 

 

 

 

以上、個人的に選んだ2022年にリリースされたラブライブ!楽曲の上位10選となります。『Eutopia』、『ENJOY IT!』あたりが惜しくも選外という感じです。

今年も良い曲との出会いがたくさんあって、良い1年だったと感じています。10選に関してはいかがでしたでしょうか?「この曲が入っていないなんて…!」というような意見もきっとあるかと思います。ぜひ、皆さんの10選もお聞かせいただけたらなと思っています。それでは、ここまでお付き合いくださった方々、ありがとうございました。良いお年を!

*1:2021年10月から2022年1月にかけて行われた1stライブツアー、2022年3月から6月にかけて行われた2ndライブツアー、2022年12月から2023年3月にかけて開催中の3rdライブツアーの3つ

*2:公式的にはあくまで学ラン

*3:優木せつ菜役の楠木ともりが降板する前では最後の12人揃ってのライブであるため

*4:誕生日に新規リリースされたものでは2曲目

*5:東京ドーム2日目は配信視聴だった自分もそう感じたくらいなので、現地組はもっと凄かったと思う

カタールW杯を戦う(戦いません)女性声優日本代表26人を選出!(※ネタ記事です)

f:id:yoshikira10:20221030101933p:image

2017年1月放送 『あいまいみー 〜Surgical Friends〜』第4話より

 

本文に進む前に、今回の記事の内容のほとんどは日曜日(10/30)の時点で書き終えています。元々11/1がサッカーW杯の日本代表メンバーの発表の日ということで、それに合わせて投稿しようと書いた記事です。

本日、楠木ともりさんに関してその病名・症状とラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会・優木せつ菜役の降板が発表され、彼女を応援する1ファンとしても、正直気持ちの整理がついておりません。今後の自分のオタク活動をどうしていけばいいのかすらまったくわからない状況です。そんな中で、敢えてこの女性声優に関連した記事を出すのは、今は極力「いつも通り」でいたい、そんな気持ちを大切にしたいと思ったからです。

正直「受け入れろ」とは僕からは絶対に言えませんし、そもそも僕自身時間が経ったところで受け入れられるようになるのか自信がありません。それでも、こんな一言でいってしまえば「くだらないこと」を考える、その余裕は少なくとも自分にとっては必要だと感じています。この気持ちを少しでも理解していただけるようでしたら、本文に進んでください。(やっぱり内容はくだらないけど)

 

本日、いよいよカタールW杯に向けた日本代表のメンバーが発表となりました。史上初のベスト8を目指す戦いということで、日本代表の活躍に期待したいですね!…

 

と、まあ前置きはこのくらいにして、今をときめく女性声優の日本代表をサッカー風にして選んでいこう!というのが本記事の内容となります。完全にお遊び記事なので、「声豚キモ!w」くらいの気持ちで付き合っていただければ幸いです。

なお、サッカー風に選んでいくためポジションや背番号も記載していますが、これは完全に僕の独断と偏見です。「◯◯はそのポジションじゃないだろ!」みたいな意見があれば是非聞かせてほしいです。笑

 

なお、この内容は冒頭にも載せましたが『あいまいみー』のアニメで出てきた「声優イレブン」から着想を得ています。

ちなみにそのメンバーはこんな感じ

[システム 3-4-1-2]

GK 井口裕香

DF 悠木碧

DF 茅野愛衣

DF 竹達彩奈

MF 本渡楓

MF 花澤香菜

MF 内田彩

MF 佐倉綾音

MF 内田真礼

FW 大坪由佳

FW 上坂すみれ

 

割と守備が固そうなチームって感じですね(謎)。今もそのまま代表に選ばれてそうな人、今だと入れ替わりがありそうな人(ポジション)、それぞれいると思います。5年前のメンバーなのである程度入れ替わりが起きるのは当然なのですが…

 

それでは、メンバー発表の方に移っていきたいと思います。

 

・1 日高里菜 1994.6.15生

井口裕香の後任で日本のゴールマウスを守れるのは誰かということを考えた時、真っ先に名前が浮かんだのが日高里菜でした。同じ事務所で同じロリ系に強い声優というのも大きい。

 

・12 花守ゆみり 1997.9.29生

日高里菜が相手でも十分に正守護神争いできそうな若手だとこの辺りになるかなと。声質と演技力の良さはこの世代では随一のものだと思います。

 

・23 小原好美 1992.6.28生

年齢的に言えば比較的遅咲きになりますが、近年の若手の中では特に「声が良い」声優として頭に思い浮かべる人も多いはず。演じた子が人気キャラになりがちなタイプ。

 

・2 悠木碧 1992.3.27生

「声優イレブン」からそのまま選出。業界屈指の迫力ある演技が特徴。狂人や奇人でも問題なく演じられる分そういう役が目立ちますが、正統派ヒロインでも良い演技をしますよね。

 

・3 早見沙織 1991.5.29生

優しく包み込むような声を生かした役柄から変人まで幅広くこなせる実力派声優。日本のDFリーダーにするならこの人というイメージがなぜかあります。

 

・5 雨宮天 1993.8.28生

人気も実力も今の若手声優の中ではトップクラスなのではないでしょうか。透き通るような声質からおバカキャラまで繰り出せる演技幅は魅力的です。安定感も抜群。

 

・6 鬼頭明里 1994.10.16生

声優界屈指のユーティリティプレイヤー。個人的には「モダンな声優」というイメージです。恵まれた声質を生かした役柄が多いですね。

 

・13 和氣あず未 1994.9.8生

上述の鬼頭明里とセットのイメージが強い人も多いはず。いつのまにか覇権作品の申し子みたいなポジションになっていましたね。

 

・17 上田麗奈 1994.1.17生

演技力、歌唱力、それらを含めた総合的な表現力は圧倒的。特に「狂ってる」役の演技は最高です。新時代のDFリーダーに推したい(?)。

 

・20 本渡楓 1996.3.6生

「声優イレブン」からそのまま選出。主演を演じることが多く、実際に「主人公声」って感じがします。2018頃からは出演作が安定してヒットするようになった印象。

 

・21 高橋李依 1994.2.27生

透き通った声質が特徴。人気作品での起用も目立っており、今の若手の中でのトップランナーという立ち位置にいるイメージがあります。

 

・22 石見舞菜香 1998.4.30生

近年の若手の中では実力派声優の代表的な存在と言っていいと思います。アイドル系の活動が少なく、純粋に声質と演技力の良さを買われている印象です。

 

・25 黒沢ともよ 1996.4.10

シンプルに「演技力」で勝負できる声優だと思います。年齢的にはまだまだ若手の域ですが、演技の質はベテランさながらといった感じ。

 

・4 小倉唯 1995.8.15生

世界に通用するユイ・オグラ。日本が誇る最強の"アイドル声優"だと思います。割と強気な性格っぽいのも良いですよね。直接FKとか得意そう(?)。

 

・7 花澤香菜 1989.2.25生

年齢的には今回が最後のW杯かな(?)。それはさておき、この最近では主人公の母親役とかも増えてきて、次のステージに進みつつある感じの声優ですね。「声優イレブン」からそのまま選出。

 

・8 佐倉綾音 1994.1.29生

「声優イレブン」からそのまま選出。アイム→青二移籍は結構話題になりました。年齢的にも業界内のポジション的にも一番脂が乗ってる時期だと思います。

 

・10 水瀬いのり 1995.12.2生

おそらく今日本で一番人気がある女性声優だと思います。声優活動はもちろんのこと、水樹奈々を目標にしてると話すアーティスト活動も極めて順調な業界の絶対的主力。

 

・14 東山奈央 1992.3.11生

声質、歌唱力に特徴を持ち、英語も堪能なハイスペック声優。あの声質でありながら、それに頼らないタイプのキャラクターもきちんと演じてくることができます。

 

・15 市道真央(M・A・O1992.2.1生

圧倒的な演じ分けスキルで毎クール何かしらの作品で必ず名前を見かけるカメレオン型声優。声優としてのポリバレントさは他の追随を許していないです。

 

・16 大西沙織 1992.8.6生

2番手〜3番手くらいのヒロインを演じさせるならこの人といった感じの声優。声質の良さはもちろんのこと、アーティスト活動等は無いものの歌唱力の高さはかなりのレベルだと思います。

 

・18 楠木ともり 1999.12.22生

個人的な推し声優。なんといってもその多才さは目を見張るものがあります。もともとセンス・タレント性の塊のような声優でしたが、着々と出演作を増やしてきているのは良い傾向。

 

・26 鈴代紗弓 1998.2.4生

近年において順調に出演作品数を伸ばしている若手の代表格というイメージ。ここ最近の日ナレ系の若手ではアーツ優勢な感じもしています。

 

・9 上坂すみれ 1991.12.19生

「声優イレブン」からそのまま選出。どちらかというと本人の強烈なキャラクター性が注目を受けてる印象もありますね。趣味も色々危ない感じもしますが、賢いのでやらかしはなさそう。

 

・11 伊藤美来 1996.10.12生

何だかんだでここのところはレギュラー出演の作品数も増えている声優だと思います。この世代ではエース格と言ってもいい1人。

 

・19 富田美憂 1999.11.15生

デビュー当初から注目度は高かったと思いますが、ここ最近に来て飛躍的に出演作品数を伸ばしていますね。声質、演技力ともにこの世代の中では頭1つ抜けている印象です。

 

・24 ファイルーズあい 1993.7.6生

声優界に突如として現れた新星。エジプトと日本のハーフ。演技力もコミュ力も「規格外」といった感じで、デビュー5年未満とはとても思えない貫禄を漂わせています。

 

以上、26名となります。作品への出演の多さ、演技力や声質への評価、人気、勢い、その他諸々の要素を勘案して独断と偏見で選んだ、今の日本を代表できる女性声優だと思っています。選出した世代は88世代〜99世代ということで、年齢分布的にも割とバランスの取れたチームと言えるのではないでしょうか。このメンバーで日本が世界に通用するというところを示していってほしいですね(?)。

 

・2022 カタールW杯 女性声優日本代表メンバー一覧(背番号順に表記)

1 GK 日高里菜

2 DF 悠木碧

3 DF 早見沙織

4 MF 小倉唯

5 DF 雨宮天

6 DF 鬼頭明里

7 MF 花澤香菜

8 MF 佐倉綾音

9 FW 上坂すみれ

10 MF 水瀬いのり

11 FW 伊藤美来

12 GK 花守ゆみり

13 DF 和氣あず未

14 MF 東山奈央

15 MF 市道真央(M・A・O)

16 MF 大西沙織

17 DF 上田麗奈

18 MF 楠木ともり

19 FW 富田美憂

20 DF 本渡楓

21 DF 高橋李依

22 DF 石見舞菜香

23 GK 小原好美

24 FW ファイルーズあい

25 DF 黒沢ともよ

26 MF 鈴代紗弓

 

予想フォーメーション

[4-3-3]f:id:yoshikira10:20221030143150j:image

 

ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございます。

ラブライブ!スーパースター‼︎2期を自分なりに噛み砕いていく〜自分にしかできない見方を〜

みなさん、こんにちは。虹ヶ咲5thの感想記事(虹ヶ咲5thライブについて感じたことを - よしのきららのブログ)に引き続き、今月2本目となるブログの更新です。

 

ここ最近、ラブライブ!スーパースター‼︎のTVアニメ2期についていろんな人が感想のブログを上げているので、流行り(?)に自分も乗っかってみようという感じです。軽めの気持ちでお付き合いいただければと思います。

 

さて、本題に入っていくのですが、その前に現状としてラブライブ!スーパースター‼︎の2期に関してはかなり批判的な意見も多く見受けられます。個人的に、批判意見そのものにはあまり賛同できないことが多いですが、批判意見が出てくること自体は仕方ないとも思っています(言い方に問題を感じることはありますが)。

今回はどちらかというとスーパースター2期の内容については肯定的な立場からの感想ということにはなりますが、決して「批判的な見方をするのが悪い」「批判している人は解像度が低い」というようなことを言いたいわけではないので、その点は先に伝えておきます。

 

それでは、感想の方を言っていきたいと思います。

 

目次

・2期はどんな話だったのか。「縦軸」を考える

・「スーパースター」というタイトルの意味

・1年生が果たした役割

・平安名すみれという人間

・澁谷かのんの才能

・最終的な着地点は何なのか

 

  • 2期はどんな話だったのか。「縦軸」を考える

まず、感想を話す場合にはその物語が「どんな話だったか」を掴んでおく必要があります。ここでの「どんな話だったか」ということについては、主に2つの概念を用いて考えたいと思います。1つはそれぞれのエピソードが個々に持つ意味を考えるための「横軸」、そしてもう1つがそれらのエピソードが連なって形成される1つのストーリーについて考えるための「縦軸」の概念です。

例えば1〜2話では「桜小路きな子のスクールアイドルへの出会いと挑戦」「新たな目標に向かって動き出したLiella!の決意」が「横軸」としてのテーマとなっていたり、4話では「しきメイのお互いへの思いやりとエール」が、9話では「すみれの可可に対する特別な思いと葛藤」が「横軸」として展開の起伏をもたらしたりしていました。

これら個別のエピソードについても個人的に良かったと思えたり、好きな内容と感じたりするものがあったのですが、ラブライブ!スーパースター‼︎のアニメはそれらの「ショートエピソード総集編」では無いわけで、作品全体に対しての感想を言うのであればやはり「縦軸」についても把握しておく必要があります。

1期の時の縦軸は最終回の12話で非常にわかりやすく提示されており、挿入歌の『Starlight Prologue』という名前が表しているように「スーパースターへの序章」「(何かを成し遂げるという)夢への第一歩」がそのままアニメ1期のテーマとなっている感じでした。12話でSunny Passionに敗れたLiella!が初めて「負けることの意味」を知り、「勝ちたい」という目標を明確にする、そうして終わりを迎えた1期の構成はかなり綺麗だと思いましたし、2期への期待も非常に高まる内容だったと言えます。

2期はその1期の続きとして描かれるわけなので、「縦軸」もそこは意識されていると感じました。OPの『WE WILL!!』の歌詞で"さあ戦うんだいま 僕らの風巻き起こそう 駆けのぼってくのさ 絶対負けない勝つんだ!"とあるように、「勝ちに行くこと」がまずは念頭に置かれていたと思います。

「勝ちに行く」という意味でのスーパースター2期のストーリーはかなり王道かつシンプルです。1期でも示されていたようにそれぞれに異なる想いを抱えてLiella!としてスクールアイドルの世界に飛び込んだ2年生の5人でしたが、彼女たちがそれぞれに抱える想いを口にしても*1「あくまで優勝を目指す」という部分は全員が共有できる目標としてずっと存在し続けていました。2話で一時はその目標を見失いかけるわけですが、それがかえって「優勝を目指したい」という意志の強さを確認することにつながったのは個別のエピソードが全体のストーリーの中で果たす役割としても良かったと思います。

そして「勝ちに行く」ということを明確な目標に掲げたLiella!にとって、乗り越えなければいけない大きな問題が2つ提示されていました。1つは「2年生と1年生の実力差」問題であり、もう1つは「ウィーン・マルガレーテの存在」です。

2期でのLiella!に関しては、これまでにラブライブ!シリーズで描かれてきたグループと違い「それなりに名の知れた強豪校」というポジションでラブライブに挑むことになります。ある意味ではこれまでで一番「優勝」という目標が「地に足ついたもの」であるともいうことができ、それゆえに「堅実な勝ち方」を求められる側面があったのかもしれません。だからこそ「1年間のアドバンテージがありハイレベルなパフォーマンスを見せる2年生」と「その2年生に憧れて今年からスクールアイドルを始めた1年生」の間の実力差というのは「あって当然」で、なおかつ「何とかする必要がある」ということなんだと思います。当たり前のことですが、1年生が2年生に追いつこうと努力する間に、2年生も同じように努力を続けているわけで、「実力差」というのは簡単には埋まりません。それでも何とか食らいつこうとするからこそ1年生も輝いて見えるし、ただ実際には実力差は埋まらないので9話のような「1年生を外す」という話も出てくる、そこに不自然な点は特にないと感じています。

そして「勝ちに行く」というLiella!にとって、大きな障壁として立ちはだかったのがウィーン・マルガレーテです。彼女は3話の代々木スクールアイドルフェスで「優勝候補」だったLiella!の前に現れ、優勝を掻っ攫っていきました。文字通り見る人を「圧倒する」というパフォーマンスで、スクールアイドル界の新たなスターとなったマルガレーテは、今度はLiella!にとっても超えるべき目標だったSunny Passionの前に立ちはだかり、連覇の夢を打ち破っていきます。ここで重要なのは、「ウィーン・マルガレーテがその圧倒的な実力をもって優勝を目指すLiella!やSunny Passionの前に立ちはだかった」ということです。これまでの作品と比べても優勝という結果を強く意識していたスーパースターにおいて、ウィーン・マルガレーテというライバルの登場は強力な意味を持っていると感じます。

10話では、あくまで観客を圧倒し出場してくるスクールアイドルを打ち負かそうとするマルガレーテのステージに対して、Liella!は「みんなで楽しむ」というスタンスで会場を味方につけたことでラブライブ決勝大会への進出を決めました。ここまではラブライブで勝ちに行く」という明確な縦軸に基づいたストーリーだと感じていて、Liella!がマルガレーテに勝利するという結果の理由のところまで描ききった点については本当に良かったと思います。実力差の問題もマルガレーテの存在も、10話での(厳密には11話で明かされる)東京大会の勝利という結果に至る過程の中で、しっかりとストーリー上における役割を果たしていたと評価することができます。

ただ、10話(11話の東京大会の結果判明)まではそのような評価になるですが、この「縦軸」の部分がラブライブ決勝大会のところまではあまり繋がっておらず、別の「縦軸」に切り替わった感じもしていて、12話までを1つの作品として見た場合のスーパースター2期への評価はかなり難しいところです。12話のラストでかのんがそのまま留学をしていれば、2つ目の「縦軸」の話もできたとは思うのですが、現状そこはどうしても宙に浮いてるような気もします。あるいは「勝ちに行く」という縦軸をそのまま決勝大会でも大いに意識した作劇であれば違った印象になっていたのかもしれないですが、結局この辺りはSunny Passionもマルガレーテも都内のスクールアイドルで、決勝大会における新たなライバルを登場させるほどの尺もない以上、仕方がなかったような気もします*2

 

  • 「スーパースター」というタイトルの意味

ここまで、スーパースターの2期は「Liella!がラブライブで勝つこと」を縦軸として描かれたストーリーであることを説明してきました。ラブライブでの勝利を目指したLiella!が、実際にその結果を掴み取るまでの過程において、乗り越えるべき壁を超えていくという2期のストーリーはきわめて王道的であり、方向性としても明確です。それでは、そもそもLiella!にとっての「ラブライブで勝つこと」とはどのような意味があるのか、といった点についても少し触れていこうと思います。

ここで少し作品とは直接関係ない話をするのですが、今年のサッカーの天皇杯で優勝したのはJ2のヴァンフォーレ甲府でした*3。一方、昨年に優勝したのはJ1の強豪・浦和レッズでした。同じ「天皇杯優勝」という結果であっても、「浦和が優勝する」というのと「甲府が優勝する」というのでは見てる人に与えるインパクトもかなり違ってきます。浦和が優勝しても「順当」「むしろタイトルを取れない方が問題」くらいに言われてしまうのですが、甲府の優勝に関しては「感動した」「すごい」「歴史に残る優勝」といろんなところでその結果を称賛するコメントが見られています。つまり何が言いたいかというと、同じ大会の優勝でも誰(どんなチーム)が優勝するかによって人々に与える印象は全く異なるということです。

これをラブライブに当てはめて考えます。スーパースター2期のLiella!は序盤から「学校にとっての誇り」「ラブライブ優勝候補」「新入生の憧れ」といった扱いであり、前年優勝者のSunny Passionからも一目置かれるなど、今までの作品で出てきたスクールアイドルとは明らかに違う描かれ方をしています。ようするにラブライブ!スーパースター‼︎におけるLiella!のラブライブ優勝というのは、甲府の優勝のように見た人の多くから「すごい」「感動した」と言われるような類のものというよりは、浦和の優勝のように「あー、今年はそうなんだ」と受け流されてしまうくらいのものという方が適切で、その点を意識せずにμ'sやAqoursラブライブで優勝した時の描写と比較するとどうしても薄味に感じてしまうのだと思います。

そして個人的には、この「勝って当たり前」*4というLiella!の描き方こそが、本作が「ラブライブ!スーパースター‼︎」たり得る重要なポイントだと感じています。この物語は、「普通の子」が「特別な結果を生み出す」というストーリーではなく、「特別な子」が「相応しい結果を生み出す」というストーリーであると読み取ることができて、そこが今までのラブライブ!の作品とは異なる新規性の部分と言えます。実際、「弱小校の優勝」と比べて「強豪校の優勝」は「ストーリー性」がどうしても薄く感じられる側面があり、本作についてもその点は例外ではないと感じます。ただ、「強豪校=スーパースター」を主人公側に据えて描いた作品としてのスーパースター2期は、しっかりと展開の起伏や乗り越えるべき壁を描けているという点で、個人的には高く評価したい感じです。

 

  • 1年生が果たした役割

「普通の特別」を描くのではなく「特別の普通」を描いたのがスーパースターであるという認識を伝えてきましたが、ただ「特別の普通」を描くだけでは我々のような「普通のオタク」にとってはどうしても遠い存在のような話に感じてしまう部分があります。そこで重要になるのが1年生の4人の存在です。

まず、前提として2年生の5人は1期の頃から「特別な存在」であることを度々強調されていたという点を押さえておく必要があります。かのんは歌の、千砂都はダンスのスペシャリストでありその実力はスクールアイドルを始める前の時点で「特別」の域に達していましたし、恋は文武両道の才色兼備な存在として描かれており、すみれは幼い頃から芸能活動をしていたという特別な経験の持ち主で、可可は運動以外はパーフェクトという設定です。そんな特別な才能や実力に恵まれた2年生(1期生)の5人がスクールアイドルになり一つの方向へと進み始めた時点でそれはもう「スーパースター」の領域になってくるわけですが、1年生の4人には少なくともスクールアイドル活動を始める前の段階ではそういった「特別な何か」を持っていたような描写はありませんでした*5。つまり「特別の普通」を主に描くスーパースターにおいて、1年生の描写は「普通の特別」の部分を補完しているとも言えます。

特に顕著と言えるのがオニナッツこと鬼塚夏美に関する描写の部分です。彼女は「何をやっても夢に近づくことができない」というこれまでの経験から「夢を語らなくなった」という人物造形であり、「持たざる者の葛藤」が描かれていました。スーパースターで描かれることが多いのは、かのんが歌の才能を発揮できずに苦しんでいたというような「持つ者の葛藤」の方なので、夏美に関してはある意味では今までシリーズで描かれてきたスクールアイドルにより近い存在であるということができます。夏美はハイレベルなLiella!という集団の中においては、パフォーマンスの面でそれほど秀でた存在とは言えないかもしれませんが、加入直後の6話挿入歌『ビタミンSUMMER!』では即センターの座を務めています。Liella!の中でも安定して高いパフォーマンス能力を持つとされるすみれでさえ、加入後しばらくはセンターを務めることができなかったわけですが、パフォーマンス能力ではそれほど高くないとされる夏美がすぐにセンターを務めたというのは、2年生と1年生の抱える課題の違いを表しているのだと思います。ハイスペックな2年生に対して、多少引け目を感じることはありつつも、なんとか並び立とうとする1年生の姿勢は、スーパースターという作品において燦然と輝いて見える部分でもあります。

 

  • 平安名すみれという人間

ハイスペックな2年生と「持たざる者」な1年生を見比べて、1年生に関する描写が持つ意味についてここまで考えてきました。ここからは、そんな1年生の描写が増えたことでより解像度が上がった2年生についての話です。2期においては、新たに1年生4人が加わったことで、既存の2年生5人についても新たな側面が見えるようになりました。それは1年生と実際にどう関わっているかというのもそうですが、1期の時の描写についても2期での描写と見比べることで違った見方ができるようになるということです。

個人的にLiella!の推しである平安名すみれも、2期になってからより人物像への解釈に深度が出てきた1人です。すみれは元々芸能の仕事の経験があり、Liella!の中でも現実的な視点や総合的に高いパフォーマンス能力を持った存在として描かれてきました。しかし、そんな「エース級」の実力を持ったすみれですが、実際に「エース(=センター)」としての活躍を見せたのは加入からおよそ半年後の『ノンフィクション‼︎』のステージでした。一方で先述のように夏美は加入直後の『ビタミンSUMMER!』のステージでセンターを務めていることから、夏美とすみれでの違いについても考えることができます。2人ともLiella!への加入自体を勧誘されたのは澁谷かのんによってということにはなりますが、夏美にとっては「最後の一押し」でありすみれにとっては「最初のきっかけ」でした。夏美はLiella!に入る前の時点でエルチューバーとして前に進めていたからこそ、かのんの言葉で『ビタミンSUMMER!』のセンターも務められましたし、その前の時点で1年生3人を見て自分も変わろうとし始めていました。一方ですみれはLiella!に入るまでは消極的な方法での「スカウト待ち」しかできず、前に進むことを恐れてしまっていたからこそ、『ノンフィクション‼︎』の前まではセンターの座を務められなかったということが明確になったわけです。

すみれが可可に貰った『ノンフィクション‼︎』のティアラをずっと大切にしまっていたというのも、すみれにとってあの時可可からかけられた言葉が前に進めなくなっていた自分を変えてくれたからで、そのことにずっと感謝をしていたのだと考えれば、この上なくしっくりくる描写だと感じましたし、9話はその辺りの「答えあわせ」として最高の回だったと思っています。可可への感謝の気持ちが大きくなりすぎたからこそ、唯一彼女の帰国問題を知る立場として「ラブライブで勝つ」という結果にこだわり、それゆえに他のメンバーとはどこか違うところを見据えていたような描写が多かったのも、本作がそういった感情や思考の部分について丁寧に描いていることの表れで、個人的に高く評価したいポイントです。

 

  • 澁谷かのんの才能

2期での2年生の描写で、特に重要といえるのが(これは賛否両論ありますが)かのんに関する内容です。1期ではスクールアイドルを始めるきっかけとなったのは可可の行動であり、かのんはあくまでそれに巻き込まれるような形でスクールアイドル活動をスタートしました。歌の才能に恵まれながらも過去の失敗の経験から歌うことができなかったかのんは、最近はやはり無理だと弱気になりますが、自分を信じる可可に応えたいと思うようになり、過去のトラウマを克服して再び歌を人前で披露できるようになったという流れです。挫折を経験していることもあり、他人に対しての共感力が高い人物として描かれていたかのんは、すみれのスクールアイドルへの勧誘、千砂都のダンス大会への駆けつけに加え、当初対立していた恋に対しても事情を理解し想いを汲み取ろうとするなど、作中の人物はもちろんのこと多くの視聴者にも魅力的な人物として映っていたことと思います。

2期においてはそんなかのんのいわゆる「人たらし」的な部分がこれでもかというほど描かれており、特に1年生に対して強い影響を与えていたように感じます。この点についてはいくつか考慮すべきポイントがあると思っていて、まずはかのんが「自身がとてつもない才能に恵まれていること」、そして「他人への共感力が非常に高いこと」、さらには「相手に合わせた言葉を選ぶ能力が卓越していること」です。一つずつ紐解いて見ていきます。

1つ目の「かのん自身がとてつもない才能に恵まれていること」については、言葉の通りかのんの歌の才能が圧倒的なものとして描かれているということです。スーパースターは「特別な子」を描く物語なわけですから、かのんの才能についてもフィーチャーされるのは至極当然のことと言えます。物語開始時点でのかのんはその才能によって周りからの期待を一身に背負った結果、プレッシャーで潰れてしまったというところから描かれており、そんな彼女がその才能を遺憾なく発揮できるようになることはスーパースターの物語が着実に前へと進んでいることの表れなんだと思っています。そして才能を発揮できるようになったかのんはLiella!や結ヶ丘の中心人物としての地位を確立していくわけです。

2つ目の「他人への共感力が非常に高いこと」については、彼女が才能に恵まれながらもそれを思うように発揮できずに苦しんでいた経験があったからこそ、いろんな相手の立場に立てるという点です。才能があって、それを遺憾なく発揮し続けられる人間は凄いのですが、かのんの場合はそうでないからこそきな子や夏美のような相手であってもきちんと対話ができるわけです。才能があるゆえに大きな挫折をしたというかのんだからこそ、才能の有無や挫折の経験の有無と言った立場の違いを超えて寄り添う姿勢を見せられるのであり、これはまさしくかのんにしかできないことです。

3つ目はそのことと関連してくることで「相手に合わせた言葉を選ぶ能力が卓越していること」です。立場の違いを超えて相手に寄り添うことのできるかのんは、ただ寄り添うだけでなく相手にとって欲していた言葉を投げかける能力にも長けています。元々才能には恵まれていて、過去に挫折を経験しており、さらにその挫折を乗り越えようとしているかのんは、自分自身に対しても他人に対しても説得力のある言葉を発することができるために、物語を前に進めることができる存在としてこれ以上ないと言えます。

つまり、ここで言いたいのは「澁谷かのんはなるべくして主人公になった存在」で「スーパースターの中のスーパースターになり得る器」でもあり、そんな彼女が誰かに強い影響力を持ったり物語の中心として目立ったりするのは決して不自然ではないということです。「かのんばかりが目立つ2期の描写は問題だ」という意見もバランスということを考えればその通りではあるのですが、かのん自身がそこから先を見据えた存在として描かれている以上、個人的には行く末を見守りたい気持ちの方が強いです。

 

  • 最終的な着地点は何なのか

10話までのストーリーが「Liella!として勝つこと」に焦点を当てていることはここまでで説明してきました。一方で、11話と12話に関しては「次の縦軸」に移行しているという見解も示してきましたが、これこそが澁谷かのんの才能と行く末なんだと思っています。結局2期の12話のタイミングでは中止になったものの、かのんがウィーンの音楽学校に留学するという話も、「才能」にスポットを当ててきたストーリーだからこそ次のステップとしてはするべき話なのだろうと解釈しています。

一方で、今このタイミングでは留学をしないということについて、ストーリー展開上の都合を考えなかった場合、何か納得の行く理由を示せるのかに関しては3期を待つ他にないという感じです。結局、2期の最後ではその部分は宙に浮いたまま終わっているので、「2期の着地点はこうだ」というのを自信を持って示すことはできないです。やはり1期の時と比べると全12話を通した時の「縦軸」としてのテーマは分かりづらくなっているとは思います*6。ただ、やはり全体としてはテーマを明確に設定した上で話が進められている印象は強く、その点に関しては監督の京極さん、シリーズ構成・脚本の花田さんをはじめとする制作スタッフに対して信頼を置けるというのが個人的な見解ですし、そこは誰が何と言おうと気にせずに主張していきたいところです。

この記事の最初のところでも言いましたが、結局作品に対する意見というのは人それぞれである以上、自分と違う意見についても否定や封殺をするのは違うと思っています。正直いって、自分はそんなに文章をロジカルに組み立てられるタイプじゃないですし、そういうのが得意な人はほかにたくさんいます。ただ、そういった人が「オレの見方が正しいんだ。お前の見方は間違っているんだ」みたいな言い方をされているのを見ると悲しくなるのも事実です。そこで最後に些細なお願いなのですが、自分も含めて他人の意見に対して異論・反論をぶつけていくというのは大いにやってほしいのですが、あくまでそれはその人自身の意見であってほしいということです。お互いに、その人自身の意見を言い合いつつ、見解の違いを楽しむくらいのスタンスでいきたいものです。

*1:例:恋「この学校にスクールアイドルを根付かせたい」

*2:だから擁護すべきという話ではないが、結局3期を見ないことにはちゃんとした評価はできないと思う

*3:絵森彩さんのツイートを見て結果だけ知ってるオタクも多いと思われる

*4:これはさすがに言い過ぎな気もするが、勝利という結果へのカタルシスが特別に大きいわけではないという意味

*5:四季の発明スキルに関しては特別といってもいいのだが、いかんせんギャグ的な要素が強く2年生の持つ能力のような強みとして扱われる場面は少ない

*6:というか、1〜10話と11〜12話+3期で別々に設定されていそうな雰囲気